イメージフォーラム(東京・渋谷)で映画『ラサへの歩き方 祈りの2400km』(2015年、中国)をアンコール上映で見てきた(2018年1月7日)。
2016年に日本で公開されたようだが、公開されたこと自体をまったく知らなかったのだ。この機会に見ることができたのは、ほんとよかった。チベットものであるからには見逃したくないからだ。
チベット人の一家11人による「カイラス山巡礼」を、セミドキュメンタリータッチで描いたロードムービーだ。
居住地から、まずはラサを目指して巡礼を開始。なんと「五体投地」(!)でゆっくりと着実に進めていく巡礼行。トラブル続きで、艱難辛苦を絵に描いたような旅だが、そうであればこそ、なおさら得られる功徳は大きい。
最初はアスファルトで舗装された車道を、舗装が途切れるとがれきの道を、水があふれた道もまた、マニ車を回しながら先導する老人について、大人も子どもも妊婦も(!)、みな五体投地で進んでゆく。その日の行程が終われば、トラクターで引いてきたテントを張って露営する。
巡礼行の途中で新たな生命が誕生し(・・なんと出産シーンまで登場!)、そしてそれと引き替えのように、老いた生命が消えてゆく。「人生は旅」とはよく言われるが、まさに「旅こそ人生」といった感じの道中である。
ラサでカネを使い尽くした一行は、男たちが2ヶ月間ラサで肉体労働をしたのち、巡礼行を再開する。カネがなくては巡礼はできないのだ。テントで露営するから宿代は浮かせるが、巡礼者も飯は食う。
日本語のタイトルが『ラサへの歩き方』となっているが、ラサは巡礼の最終地点ではない。ポタラ宮のあるラサは聖地ではあるが、あくまでも通過点に過ぎないのだ。巡礼の最終目的地はカイラス山である。 ラサまで1,200km、ラサからカイラス山までさらに1,200km。想像を絶する距離である。
(オリジナル中国版のポスター Wikipediaより))
チベットは中国の領土内にある。ラサもカイラス山も中国領だ。中国人監督による中国映画だから、セリフの大半がチベット語であっても、ダライラマの「ダ」の字も出てこない。中国政府の検閲が厳しいから仕方がない。そういうものだと受け止めるべきだろう。
(カイラス山のノースフェイス Wikipediaより)
とはいえ、この映画は中国ではなんと300万人以上が見た大ヒットになったという。一般の中国人にも、巡礼に命をかけるチベット人の生き様と、そしてチベット仏教に、なにか感じるものがあるに違いない。現在に生きる中国人の多くが、スピリチュアルなものを求める精神的な飢餓状況にあるのだろうか。
わたし自身は、当然のことながら五体投地ではないが、いまから20年以上まえの1995年にラサには巡礼している。まだこの目で見ぬ、映画のなかで見る白銀のカイラス山がとても美しく、かつ神々しい。おそらく生きているうちにカイラス山に行く機会はないだろうが、巡礼映画のなかで見るだけでも十分に満足だ。
(映画よりビデオキャプチャ amazonサイトより)
テーマ音楽も効果音もほとんどない、自然音とチベット語のセリフだけで2時間の映画だが、チベット人一家とともに巡礼をともにしている気分にさせてくれた。
中国のチベットものには『ココシリ(可可西里)』(2004年)などすぐれた作品もある。ダライラマを拒否する中国の映画だから見ないというのはもったいない。ぜひ見るべき映画だと思う。
<関連サイト>
ラサへの歩き方 祈りの2400km 公式サイト
ラサへの歩き方 祈りの2400km 映画.com
映画「ラサへの歩き方」 (1)プラ村
・・ブログ記事 「stod phyogs トゥーチョク」掲載のもの
冈仁波齐 (2015)
导演: 张杨 编剧: 张杨 主演: 尼玛扎堆 / 杨培 / 索朗卓嘎 / 次仁曲珍 / 色巴江措 / 更多... 类型: 剧情 制片国家/地区: 中国大陆 语言: 藏语 / 汉语普通话 上映日期: 2017-06-20(中国大陆) / 2015-09-15(多伦多电影节) 片长: 117分钟 又名: Paths of the Soul / Kang rinpoche
監督・脚本:チャン・ヤン
出演: チベット巡礼の旅をする11人の村人たち
2015年、中国、115分、チベット語
配給・宣伝:ムヴィオラ
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