映画『ホース・ソルジャー』(2018年、米国)をTOHOシネマズで日本公開の初日の初回で見てきた。原題は 12 Strong(12人の強者たち)。実話に基づいたストーリー。
2001年10月から11月にかけてという21世紀の初頭に実際に行われた騎馬戦。戦車や迫撃砲、ロケットロンチャーの攻撃をかいくぐりながら、騎馬軍団が馬上からマシンガンを撃ちまくる。最後の戦闘シーンは迫力満点で圧巻だ!
2001年9月11日の「9・11テロ」後のアメリカによる初めての反撃はアフガニスタンであった。
米国によるアルカイダへのリベンジの第一弾が、タリバンの拠点であったアフガン北部のマザーリシャリーフを陥落させることであった。アルカイダはタリバンがかくまっていたからだ。
反タリバンの勢力で土着のウズベク人軍閥であるドスタム将軍の側面支援を行うことがミッション。米軍はあくまでもオモテに出ず、CIAと特殊部隊が秘密作戦で側面支援する。
そのために現地に送り込まれたのが「12人の強者たち」なのだった。
(アフガン北部のまざーりーマザーリシャリーフ Googlemapより)
側面支援の具体的内容は、米空軍のB-52戦略爆撃機による9,000フィートという超高度からの空爆を地上から無線で誘導することだ。これだけの高度になると、正確な座標軸を特定しないとピンポイントでの爆撃は難しい。空爆のターゲットから離れると精度が落ちるが、爆撃ターゲットに近すぎる地点からの誘導は爆撃に巻き込まれる危険が高くなる。
制空権を奪っても、地上軍が進出しなければ占領はできない。まさに「ブーツ・オン・ザ・グラウンド」(boots on the ground)の先兵となるのが特殊部隊であり、かれらによる地上からの精密誘導なのである。
機密ミッションを担ったのが「米陸軍特殊騎馬隊」。といっても正規の編成ではなく、じつは米陸軍特殊作戦群、通称グリンベレーの12人が、現地で否応なく取らざるを得なかったのが騎馬作戦なのだった。険しい山岳地帯のアフガニスタンでは、戦車よりも馬のほうがはるかに機動力がある。 机上の作戦ではない現地での臨機応変の対応は、牧場で生まれ育った隊長のリーダーシップのたまものであった。
(予告編よりビデオキャプチャ)
現地人から信頼を勝ち得ながら作戦を実行するのは、きわめて泥臭い活動。さすがベトナム戦争で有名になったグリーンベレーである。 ここ数年は米海軍特殊部隊のネイビー・シールズ(Navy SEALs)ばかり脚光を浴びているが(・・ウサーマ・ビンラディン暗殺作戦もシールズが実行)、米陸軍特殊部隊のグリーンベレーが脚光を浴びた映画が製作されたのは珍しい。
映画の最後のクレジットによれば、ロケは米国南部のニューメキシコ州で行われたようだ。たしかに、アフガンの光景と似ている。 メキシコと隣接するニューメキシコ州は山岳地帯で砂漠地帯だ。
うちの近所では、なぜか「プレミアム・シート」でしか上映がないので今回初めて利用してみた。座り心地のいい座席で、ゆったりとできるのはメリットかも。
もちろんスクリーンは大きくて見やすく大音量。迫力ある戦闘シーンの臨場感が楽しめたい。たまには、プレミアムシートも悪くないな、と。
<関連サイト>
映画『ホース・ソルジャー』公式サイト(日本版)
12 STRONG - Official Trailer (YouTube)
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・・アフガニスタンでの対アルカーイダ掃討作戦。米海軍特殊部隊ネイビー・シールズが1962年に創設されて以来、最悪の惨事となった「レッド・ウィング作戦」(Operation Redwing)をもとにしたもの
書評 『グローバル・ジハード』(松本光弘、講談社、2008)-対テロリズム実務参考書であり、「ネットワーク組織論」としても読み応えあり
書評 『帝国陸軍 見果てぬ「防共回廊」-機密公電が明かす、戦前日本のユーラシア戦略-』(関岡英之、祥伝社、2010)-戦前の日本人が描いて実行したこの大構想が実現していれば・・・
・・「戦後米国による冷戦構造が構築される以前、地政学の観点から、帝国陸軍主導で行われた構想である。日本の敗戦後、この構想にかかわった関係者を尋問し、米国が徹底研究したことは記憶されるべきことである。 そしてなぜEUも米国もアフガンに派兵しているかについても、その意味を理解することができる。いち早くアフガンの地政学的重要性を指摘していたのは大川周明であった」
『新版 河童駒引考-比較民族学的研究-』(石田英一郎、岩波文庫、1994)は、日本人がユーラシア視点でものを見るための視野を提供してくれる本
・・中央アジアの馬
書評 『馬の世界史』(本村凌二、中公文庫、2013、講談社現代新書 2001)-ユーラシア大陸を馬で東西に駆け巡る壮大な人類史
・・「戦車」に代わって「騎兵」が戦場の主役に登場する。この段階において人と馬のかかわりはより密着したものとなる。いわゆる「人馬一体」という形である。これによって機動力はさらに高まり、馬のもつ軍事的な意味は計り知れないものとなる。中央ユーラシアを疾駆する騎馬遊牧民は、離合集散しながら勢力を拡大し・・」
書評 『ポロ-その歴史と精神-』(森 美香、朝日新聞社、1997)-エピソード満載で、埋もれさせてしまうには惜しい本
・・騎馬による球技であるポロの源流は中央アジアのアフガニスタン方面にあるようだ
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