『自省録』と『ガレノス』が並んで陳列されている。これは、いい組み合わせだ。丸善ならでは、といえようか。
というのは、近代医学が発生し、確立するまで西洋医学を支配し続けた学説を生み出したガレノスは、じつはローマ皇帝マルクス・アウレリウスの侍医だったから。書店員さんの見識の高さに脱帽!
西洋医学を長く支配したガレノスが、皇帝マルクス・アウレリウスの侍医だったことは、昨年(2019年)4月に出した『超訳 自省録』(ディスカヴァー・トエンティワン)の解説には書かなかったが、ぜひ知っておいていただきたきたいと思う。紀元1世紀の話である。
皇帝(あるいは国王)と侍医の組み合わせには、このほかサラディンとマイモニデスという例もある。
サラディンとは、12世紀から13世紀にかけてエジプトを中心に中東を支配するアイユーブ朝の創始者の武人である。クルド人の出身で、アラビア語風に表記すればサラーフッディーンとなる。
マイモニデスは医師として身を立てたが、哲学者として名を残したユダヤ人である。イベリア半島のコルドバの出身だが、迫害を逃れて家族とともに地中海の対岸に脱出、最終的にエジプトに落ち着くことになった。ユダヤ思想をアリストテレスで解釈し直し、同族の指針となる著作を残している。ユダヤ風には、モーセス・ベン・マイモンという。
サラディンとマイモニデスの例をあげたが、サラディンはあくまでも武人であったのに対し、マルクス・アウレリウスとガレノスの関係は、ともに著作を残したという点が特筆に値するのである。
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