いまは亡きわが恩師・阿部謹也先生の代表作が『ハーメルンの笛吹き男』(初版単行本は1974年)。いま再び、ちくま文庫版(1988年)でブーム再燃しているという。うれしいことだ!
はじめて読んだのは、大学1年の18歳のときだった。ずいぶん昔のことだ。その当時はまだ平凡社から出ていた単行本だったが、当時も大いに話題になっていた本である。
(現存する最古(1592年)の笛吹き男の絵画 Wikipediaより)
「ハーメルンの笛吹き男」は英語の Pied Piper of Hamelin の日本語訳である。本家本元のドイツでは、ドイツ語で Rattenfänger von Hameln という。「ハーメルンのネズミ獲り男」である。
(ネズミ獲り男のリトグラフ(1902年) Wikipediaドイツ語版)
「高名なネズミ獲り男」という触れ込みでハーメルンに登場した異人は、実際にネズミ獲りで実績を示したあと、笛につられて集まってきた子どもたちを連れてそのまま忽然と姿を消し、子どもたちは行方不明となってしまう。それがミステリーの発端となる。1284年6月26日のことであった。
(ハーメルンで観光用に再現されている笛吹き男(2009年) Wikipediaドイツ語版)
内容は出版社の宣伝にまかせよう。歴史学というよりもミステリー、歴史ミステリーというべきか。ある種の謎解き。手堅い史料分析を基礎にした、巧みなストーリーテリング。こんな面白い歴史書は、そうざらにない。
おそらく、こんな本は、著者にとっても一生に一冊、書けるか書けないかわからないといった類いのものだろう。もちろん、私にも書けそうもない。
先日、丸善に行ったら、こんな感じで陳列されていた(写真)のには、大いに驚かされた。阿部先生が亡くなってからすでに14年。月日がたつのは早いが、こうやってブームが再燃することで、それ以外の著作への関心が拡がってくれるといいなあと、不肖の弟子の一人として切に願う。
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・・文庫版の解説を阿部謹也先生が執筆されている
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