不幸な出来事ではあっても、そのおかげでしばらく重版されることなく忘れかけられていた本が再版され、再認識されることがある。
昨年2019年の12月4日に飛び込んできたニュースは衝撃的だった。長年にわたってアフガニスタンで医療活動と復興支援に携わってきた中村哲医師が狙撃され殺害されたのである。たいへん痛ましい事件であり、たいへん残念としかいいようがないが、あくまでも現地に寄り添って長年にわたって支援を行ってきたその生き様は、今後も長く語り伝えられることだろう。
不幸中の幸いというべきか、この事件が1つのキッカケとなって、中村医師の著書が続々と復刊されている。そのなかの1冊が『アフガニスタンの診療所から』(ちくま文庫、2005)だ。初版は1993年の出版だから、すでに27年以上前のことになる。
この本は、ソ連による10年間の及んだ「アフガン侵攻」(1979~1988)で難民となったアフガニスタン人の支援を、隣接するパキスタンのペシャワールで行ってきた日本人医師による現地報告であり、本当に現地に役に立つ支援とはなにかを現場で考え抜いてきた人の思索が綴られたものだ。
支援が必要となるのは、なにも医療行為だけではない。教育でもビジネスでも、ありとあらゆる場面でその必要は発生する。支援とは当事者が自分自身で自立できるよう、あくまでも黒子としてコミットしつづけることだ。これが中村医師のメッセージだと私は受け取っている。
その意味を確認するためにも、ぜひ読んでほしいと思う。文庫本で200ページほどだが、内容の濃い1冊である。2005年の文庫版の解説は阿部謹也先生(2006年没)。この場を借りて、著者と解説者の追悼もあわせて行いたい。
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JBPressの連載コラム第67回は、「アフガニスタンはいつから泥沼の紛争地になったのか-国家の崩壊につながった、ソ連にとっての「ベトナム戦争」」(2019年12月17日)
(2019年4月27日発売の拙著です)
(2017年5月18日発売の拙著です)
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