第3波の「コロナ下」ではあるが、たまには外出もかねて外で映画を見る。
本日(2020年12月29日)見たのは『声優夫婦の甘くない生活』(2019年、イスラエル)。ヒューマントラストシネマ有楽町にて。イスラエル映画を見るのはひさびさだ。
イスラエル映画だが、セリフのほとんどがロシア語。というのは、この映画はソ連崩壊後の1991年に旧ソ連(=ロシア)からイスラエルに移民してきた、ロシア系ユダヤ人の中高年カップルのストーリーだからだ。
かれらがイスラエルに来てから学んでいるヘブライ語は、まだまだ初歩の初歩段階。世俗的なユダヤ人なのだろう、ソ連ではイディッシュ語は使っていても、ヘブライ語は使っていなかったようだ。
中高年になってからの新天地移住が、いかに想像以上に大変なことであることか。ソ連時代にやっていた吹き替え映画の声優の仕事は、移民先で見つからないという現実。
(*基本的にヨーロッパでは映画は吹き替えが当たり前。日本みたいに字幕で上映するケースは少ない)。
移民先での定住と、経済的に落ち着くまでの苦労をコミカルに描いた作品だ。日本語タイトルはうまくつけてるな、と思う。
(*たぶん映画で大きな意味をもつフェリーニがらみだろう。映画では直接言及されないが、フェリーニの代表作の1つが『甘い生活』)。
映画の時代背景は、ちょうど「湾岸戦争」のまっただ中。イスラエル国民全員にガスマスクが配布されていた時代だ。サッダーム・フセインのイラクから、イスラエルにスカッドミサイルが1発撃ち込まれている。このとき私は米国にいたので、このニュースのことは知っていた。日本に帰国後のことだが、放出品のイスラエル製ガスマスクを入手して現在も所有している。
(*米国では、イスラエル関連情報が日本よりはるかに多い)。
戦争が終わった翌年の1992年、私は米国からイスラエルに初めていってみた。大都市テルアビブのストリートでは、ロシア語を耳にしたものだ。当時はマルチチャンネル状態ではなかったので、ホテルで見た唯一の国営放送のニュース番組にはロシア語の字幕がついていた。それほど、旧ソ連からの移民が大量に入ってきた時代だ。
そんな30年前のことを思い出しながら、この映画を楽しんだ88分。イスラエルのふつうの人たちが、どんな生活をしているのか知ることができる映画でもある。 もちろん、時代背景を知らなくても楽しめる、中高年夫婦のロマンティック・コメディだといえるでしょう。
(*そういえば、イスラエルといえば、少年少女の恋愛事情を描いた青春映画『グローイング・アップ』シリーズが、ずいぶん昔だけどあったねえ)。
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・・配布されたガスマスクはドイツ製!
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