『100分で名著 ブルデュー ディスタンクシオン』(NHK出版、2020)はおすすめだ。現代フランスを代表する社会学者ピエール・ブルデュー(1930~2002)の主著『ディスタンクシオン』を取り上げている。
昨年2020年12月の放送だったらしいが、知らなかった。だが、このテキストはじつによくできているのでお薦めだ。
私も社会学部の卒業なので、ひととおり社会学はやっている。だが、かつて1980年代までは王座にあったドイツ社会学の巨人マックス・ウェーバーや、あるいは主流ではないがフランス社会学の祖デュルケームの時代とは違って現在はアメリカ社会学が主流だし、東大で教鞭を執っていた社会学者・上野千鶴子氏の弟子たちが大活躍しているので、かつてとはずいぶん印象の違うものになっている。
ここに取り上げられているブルデューはフランスの社会学者。難解でもって鳴るので、下手したらフランス現代思想と一緒くたにされかねない。私自身もホンネを言えば敬遠してきた。
だが、とくに教育社会学の分野では、その「ハビトゥス論」と「文化資本論」が大きく取り上げられていることくらいは、比較的知られていることではないだろうか。
このテキストの執筆者の岸政彦氏(立命館大学教授)のことは、まったく知らなかったが、彼の「自分史」を踏まえた記述は読ませるし、ブルデュー社会学を自家薬籠中のものとして「生活史」のナラティブを聞き取るフィールドワークの社会学を実践する、その姿勢には共感を覚える。
というのは、ブルデューを神格化するのではなく、その分析手法と生き方を、自分の研究者としての姿勢のガイディング・プリンシプルとしていることがうかがわれるからだ。日本の研究者としては珍しいかもしれない。いまだに「ウェーバー研究者」なるものが存在するのが当たり前な日本の社会学の世界では。
社会学者ピエール・ブルデューと主著『ディスタンクシオン』について知りたければ、まずはこのテキストを読むのがいい。私も、いずれ原著を手に取ってみたいと思う。
「安直な幻想に逃げず、現実を直視するための社会学」というコピーがいい。そう、社会学という学問は「身も蓋もない学問」なのだ。だが、それで終わりではないのである。
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