2021年2月12日金曜日

書評『バンコクドリーム 「Gダイアリー」編集部青春記』(室橋裕和、イーストプレス、2019)-あの頃は熱かった

 
ミャンマーで2021年2月1日にクーデターが発生してから、ふたたび目が東南アジアが向かっている私だが、そんんなか自分自身の東南アジア体験を振り返ることのできる本に読みふけった。 


1974年生まれで就職氷河期にぶつかった著者が、せっかくつかんだ文春記者というポジションを捨て、タイのバンコクで伝説の雑誌「Gダイアリー」の編集者として過ごした、異様にまで熱くて濃厚な日々の回想録回想録といっても、遠い昔の話ではない。10年から10数年間の過去である。だが、それでも遠い話と感じるのだ。 

著者が「Gダイアリー」(略してGダイ)の編集部にいた2006年から2011年は、ちょうど私自身がバンコクで暮らしていた時期と重なるものがあるので、なつかしく思い出しながら読みふけった。

現地にいなくては体感できない空気と土地勘、そして同時代感覚。こうしたものを共有しているので、固有名詞だけでなく細部にわたるまでだいたいわかるからね。わかる人には、わかる世界。よく働き、よく遊んだ日々、いろいろありました。ここには書かないけどね(笑) 

「Gダイアリー」といってピンときたら、あなたは真の「アジア通」です(笑) 私もこの雑誌を毎月楽しみにしている愛読者でした。実用的でかつ、雑多な分野に及んだ豊富なコンテンツ。バンコクを中心にした東南アジア世界。まさに「エロからテロまで」(笑) 


この2006年から2010年にかけては、ちょうどバンコクが絶頂期から混乱期へとシフトしていった時期であり、「Gダイアリー」にとっても絶頂期から曲がり角の時期にあたっていたようだ。 

クーデターから始まってスワンナプーム国際際空港閉鎖などなど、ほんとえらい目にあったものだ。私の場合は、幸か不幸か2009年の前半にはバンコクを引き払って日本に帰国していたので、赤組と黄色組が全面衝突した市街戦には巻き込まれなかったのが。 

あとから振り返ると、あんな日々だったのだなあ、と思うのである。そういう本を読むと、なつかしい思いとともに、二度と繰り返されるはずのない、すでに過ぎ去った時代のことなのだな、という気持ちにもさせられる。ある意味では墓碑銘(エピタフ)のようなものだ。 

おそらく著者にとっても、さらに次に進むための気持ちの整理という意味もあったのだろう。貴重な内容の回想録をありがとう。 


 
 
目 次
はじめに-夢と冒険の書Gダイ 
第1章 GダイのGは「ジェントルマン」のG!? 
第2章 僕のドリームはバンコクにある、はず 
第3章 Gダイはエロ本か旅雑誌か 
第4章 タイの政変に翻弄される 
第5章 Gダイに集う奇人たち 
第6章 Gダイ絶頂! アジアの伝説となる 
第7章 バンコクのいちばん長い日 
第8章 さらばGダイ、さらばバンコク 
あとがき-Gダイアリーは死なず 
タイとGダイアリーの歴史 
Gダイアリー 特集とおもな連載

著者プロフィール
室橋裕和(むろはし・ひろかず)
1974年生まれ。「週刊文春」記者を経てタイ・バンコクに移住。タイ発アジア情報誌「Gダイアリー」、「アジアの雑誌」デスクを務め、タイを中心にアジア諸国を取材して10年間を過ごす。帰国後はアジア専門のライター、編集者として活動(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)。


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