2021年5月4日火曜日

映画『アドミラーリ』(2008年、ロシア)を視聴(2021年5月4日)ー コルチャーク提督を「悲劇のヒーロー」として描いたエンタテインメント作品

 
 映画『アドミラーリ』(2008年、ロシア)を YoutTube で視聴。ロシア語音声を英語字幕で視聴。124分。さすがに脳内処理的には日本語字幕に劣るが無料で視聴できるのでよしとしよう。




ロシア語の「アドミラーリ」とは、英語で「アドミラル」(提督)のこと。「ロシア革命」後の「ロシア内戦」時代に、西シベリアのオムスク政府の代表となって白軍を指揮した最後のロシア帝国海軍提督コルチャークを主人公にした映画だ。

(海軍副提督時代のコルチャーク提督 Wikipediaより)

第1次世界大戦ではドイツ海軍の艦船を何隻も機雷で撃沈、栄転して海軍提督になって黒海艦隊司令官に任命されたが、革命が勃発してロシア帝国は消滅。ロシア帝国海軍もまた同様の運命をたどりことになる。革命後の水兵の反乱で、海軍将校たちが集団で処刑される。

(水兵による海軍将校の集団処刑シーン)

ケレンスキー政府のもとでニューヨークに派遣されることになるが、ボルシェヴィキによるクーデター(いわゆる「十月革命」)で誕生した「赤軍」と戦ってロシアを救済することを決意し、日本経由でロシアに帰国する(*ただし映画には日本関連のシーンはない)。 ロシア帝国最後の海軍提督は、シベリア内部で戦うことになった。

(オムスクで将兵に訓示するコルチャーク提督)

オムスク政府の代表となってボルシェヴィキの「赤軍」と戦うが、いかんせん状況はコルチャーク提督には不利なものとなっていく。体制立て直しのため、シベリア鉄道でイルクーツクに向けて撤退するも、現地を制圧していたソビエト政府に身柄を拘束され、死刑判決のすえ処刑が実行された。海軍提督らしくというべきか、銃殺後は氷結したアンガラ川に水葬される。

(イルクーツクで処刑されたコルチャーク提督)

この映画は、そんなコルチャーク提督を「悲劇のヒーロー」として描いたエンタテインメント作品だ。ボルシェヴィキ政権であるソ連時代なら、絶対に製作されることのなかったであろう。ソ連崩壊のおかげで、コルチャーク提督の夢である「ロシア復活」が70年後に実現し、その後に映画の主人公にもなったわけだ。

(アンナ・チミエヴァとの出会い)

不倫関係にあった海軍時代の部下の妻アンナ・チミエヴァとの恋愛もからめており、エンタテインメントとしてよくできている。ただし、陰謀渦巻く国際政治には触れられていない。コルチャーク提督のバックについたのは英国情報部だが、登場するのはチェコスロバキア軍の司令官となったフランスのジャナン将軍だけだ。

(オムスク政府時代のコルチャーク提督 Wikipediaより)

また、コルチャーク提督の白軍時代の悪行にはまったく触れていないのは、歴史物としては要注意だ。この映画は、光と影のうち光しか描いていない。日本でいえば司馬遼太郎のような描き方である。実際のコルチャーク提督は、権威主義的でかなり独裁的な人物だったようだ。

日本語版タイトルは『提督の戦艦』となっているが、『アドミラル』あるいは『提督』で十分だろう。あるいは『悲劇の提督』とかでいいのではないかな。シベリア鉄道映画として楽しむのもいい。


『ドクトル・ジバゴ』とおなじ時代のロシアを描いた作品である。その反対側の極東では、コサックのセミョーノフをかつぎあげた帝国陸軍による「シベリア出兵」が進行していた。




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