2021年11月21日日曜日

映画『家へ帰ろう』(2017年、スペイン/アルゼンチン)-アルゼンチンからポーランドへの「人生最後の旅」

 

アルゼンチンというと「母を訪ねて三千里」のマルコ少年を想起するが(・・19世紀イタリアの児童文学者デ・アミーチスの『クオーレ』に挿入された物語)、現在のフランシスコ教皇や「神の手」のマラドーナなどイタリア系移民が多いのは確かなことだ。 

だが、アルゼンチンに移民したのはイタリア系だけではない。日系移民もいるが、意外と多いのがユダヤ系である。しかも中東欧からの移民が多かったのが特徴だ。首都ブエノスアイレスは、世界で7番目にユダヤ系人口の多い都市である。 

そんなアルゼンチンで仕立屋(テーラー)として職業人生をまっとうしてリタイアした主人公が、88歳にして人生最後の旅に出る。それがこの映画『家に帰ろう』(2017年、スペイン/アルゼンチン)である。ユダヤ系移民は北米もそうだがアパレル関係に多い。

スペイン語の原題は La Ultimo Viaje(最後の旅)。マルコ少年とは反対に、アルゼンチンから70年ぶりに欧州に戻る最後の旅だ。 目的地は生まれ故郷のポーランドの地方都市ウッツ



なぜポーランドなのか? ポーランドにはアウシュビッツなど強制収容所があったことは周知のとおり。ポーランド生まれの主人公の老人もまた、ポーランド内の強制収容所から命からがら脱出してきたが、最愛の家族を失った人たちの一人である。 

シェイクスピアの『リア王』からモチーフをとったという、娘たちからの冷たい仕打ちに嫌気がさして家出した主人公。

ブエノスアイレスからマドリードに飛びマドリードからは陸路で鉄道の旅。ポーランドに向かう。だが、難問がある。ドイツを通らないでポーランドに行くのは可能か、ということだ。ドイツに一歩でも足を踏み入れたくない理由はいうまでもない。 

欧州横断鉄道の旅を描いたロードムービーであり、ヒューマンドラマでもある。足に障害を抱えた老人は、旅先で出会った人たちの支えを受けながら、ついにポーランドにたどりつき、生まれ故郷のウッツに向かうことになる。70年前に分かれた友人との約束を果たすために・・。 

コメディタッチで進んで行く内容が、ラストには大きな感動がまっている。すばらしい映画だった。




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