2021年11月22日月曜日

映画『ジョーカー』(2019年、米国)-まさに現在、米国だけでなく、日本でも韓国でも、世界中のどこでも進行している事態をドラマ化した作品だ

 
「あなたが興味ありそうな映画」だと amazon が薦めてくるので、『ジョーカー』(2019年、米国)を見ることにした。日本でも大ヒットして話題になっていた映画だ。だが、視聴するつもりはなくシカトしてきたのだったが・・・ 

ちょうど先日(10月31日)には、東京の私鉄の列車のなかで「ハロウィーンの惨劇」が起こされたばかりだ。現行犯逮捕された若者は、この映画に影響を受けているという報道がされていた。 そういうことであれば、見ないわけにはいくまい。

視聴してみての感想は、「バットマンの登場人物ジョーカーの誕生物語」という枠組みで捉える必要はまったくない、ということだ。 


介護が必要な母親と二人で大都会に暮らす心優しき青年アーサー。コメディアンを目指して孤軍奮闘するものの、なにをやってもうまくいかない。大きな挫折と耐えがたいまでの屈辱。まったく癒やされることのない非条理。超格差社会の底辺でもがくアーサーは、精神的に病んで疲弊し、不満が鬱積していく。そして、ついに閾値を超えた鬱積が列車内で爆発し、暴走が始まる。

アーサーは主人公の名前で固有名詞だが、みずからをジョーカー(Joker)と名乗りを変えることで普通名詞の存在となる。いうまでもなくジョーカーはトランプに登場する道化だ。しかも攻撃的道化である。心優しきピエロは、攻撃的なジョーカーに変貌する。

この名乗りが意味しているのは、バットマンの登場人物ジョーカーという特異なキャラクターは、けっして唯一無二の存在ではないということだ。いくらでも模倣者を招き寄せ、再生産されていく普通名詞の存在なのだ。

まさに現在、米国だけでなく、日本でも韓国でも、世界中のどこでも進行している事態をドラマ化した作品というべきなのだろう。 だから、この映画は「バットマンの登場人物ジョーカーの誕生物語」という枠組みで捉える必要はまったくない

見終わってもカタルシスをまったく感じない映画。おそらく、多くの視聴者にとってはそうだろう。従来のハリウッド的ハッピーエンドとは無縁の世界。ある種の感情が澱のように内面にたまっていくのを感じる。

カタルシスを感じるのは主人公アーサーと、ルサンチマンを鬱積させている民衆だけだろう。もちろん、主人公のアーサー(=ジョーカー)に感情移入できる無数の人びとがいる。もしかすると、無意識レベルでは自分もまたそうかもしれない・・・

そして現実は虚構を模倣し、ルサンチマンは解消されることなく社会に鬱積していく・・ 

そしてアタマのなかをフランク・シナトラの That's Life(それが人生ってものだ)が鳴り響きリフレーンする。この曲はこの映画のテーマソングといってもいい。


歌詞を引用しておこう。英語としてはやさしいので訳はつけないが、人生の浮き沈みを歌った内容の歌詞だ。


That's life (That's life), that's what all the people say 
You're riding high in April, shot down in May
But I know I'm gonna change that tune
When I'm back on top, back on top in June
I said, that's life (That's life), and as funny as it may seem
Some people get their kicks, stompin' on a dream
But I don't let it, let it get me down
'Cause this fine old world, it keeps spinning around

 [Chorus] 
I've been a puppet, a pauper, a pirate, a poet, a pawn and a king
I've been up and down and over and out, and I know one thing
Each time I find myself flat on my face
I pick myself up and get back in the race

That's life (That's life), I tell ya, 
I can't deny it I thought of quitting, baby
But my heart just ain't gonna buy it
And if I didn't think it was worth one single try
I'd jump right on a big bird and then I'd fly 

[Chorus] 
I've been a puppet, a pauper, a pirate, a poet, a pawn and a king
I've been up and down and over and out, and I know one thing
Each time I find myself laying flat on my face



「pで始まる普通名詞」がたたみかけるように歌われる。pawn とはチェスのコマのことだ。pawn と king が対比的に使われることが何を意味しているか説明する必要はないだろう。

また、映画のなかで流される Send In The Clowns(道化師を呼べ)もまたシナトラの曲である。




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