2022年4月11日月曜日

書評『バチカン大使日記』(中村芳夫、小学館新書、2021)ー バチカンについて知るための貴重な記録

 
『バチカン大使日記』(中村芳夫、小学館新書、2021)という本を読んだ。読みやすく面白い本だった。  

民間経済団体の経団連事務総長から、外交官未経験にもかかわらずバチカン大使になった経済人の4年間の記録。読みやすく面白かった。しかも、なかなか重要な記述が、なにげない記述として、250ページ足らずの新書本のなかにちりばめられている。

たとえば、こんな記述だ。ベテランのバチカニストから聞いた話として、「カトリックにはわからないことが3つある」というものだ。具体的にいうと、「1.世界中にいるシスターの数 2. サレジオ会の資金量 3. イエズス会士の思考」。カトリックである中村氏自身も、1と2は謎だという。3については、教皇フランシスコ自身がイエズス会士出身である。 

著者自身がカトリックであるだけに、この仕事に大きな意義を見いだして、自分が定めたミッション遂行のために尽くされたようだ。 

そのミッションとは、①教皇訪日、②空席であった日本からの枢機卿誕生、③日本バチカン国交樹立75周年事業(*)の遂行。この3つをすべてミッション・コンプリートしただけに、感慨ひとしおだという気持ちがダイレクトに伝わってくる。 

(*)バチカンは、米国の強い反対を押し切って、日米戦争中の1942年に日本との国交を樹立反共産主義の観点から満洲国を承認している。バチカンとの関係構築に昭和天皇の深い思慮も背景にあったことは、終戦工作の一環としてバチカンも想定されていたことからもわかる。「日本バチカン国交樹立75周年を迎えて」(駐バチカン日本国特命全権大使 中村 芳夫)も参照。

世界で13億人のカトリックを束ねるのが、巨大官僚機構のバチカンである。

その影響力は計り知れないものがあることは言うまでもない。 そんなバチカン市国との外交の任にあたった本人はもとより、選んだ側も(・・ただし、いかなる経緯や背景があって著者がが選任されたかは、本書からはわからないのが残念)、意義ある仕事をしたというべきだろう。 

資本主義経済のまっただなかにいた著者のような人だからこそ、「資本主義の限界」を説くフランシスコ教皇の姿勢にも共感するところが多いのだろう。それは「反資本主義」ではない。「環境問題」を重視する姿勢の反映でもある。 

異なる視点から感じる目の前の現実への違和感、この違和感が行動の原点になっていることが読んでいてよくわかった。カトリックである中村氏の、日本のカトリック教会への違和感もその一つである。

とはあれ、ビジネスパーソンのための、問題発見と問題解決の事例集と読むことも可能だろう。 





目 次
まえがき 
1. 大使の一日
2. 私的聖地ガイド
3. 昭和天皇の写真
4. 教皇から手渡された3冊
5. カトリックとの出会い 
6. スイス衛兵への敬意
7. マザー・テレサ列聖式
8. 日本のカトリック界への疑問
9. ビジネス界出身の大使として
10. 世界の宗教指導者が集う
11. スポーツと信仰
12. 日本バチカン国交樹立75周年
13. 教皇フランシスコの訪日
14. 聖職者による性的虐待
15. 中国訪問という「夢」
16. 土光敏夫会長の思い出
17.コロナとともに
あとがき

著者プロフィール
中村芳夫(なかむら・よしお)
1942年東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、同大学院経済学研究科修士課程修了。1968年経団連に入局し税制を担当。米ジョージタウン大学にフルブライト奨学生として派遣され同大学院博士課程修了。1992年、米国上院財政委員会で日本の税制について証言。2010年経団連副会長・事務総長に就任。2014年第2次安倍内閣・内閣官房参与(産業政策)に。2016年駐バチカン大使(~2020年)。教皇来日を実現。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)


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