『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』(2017年、米国)というドキュメンタリー映画を amazon prime video で視聴。205分(=3時間25分!)と長いが、たいへん興味深い内容だった。
エクス・リブリス(ex libris)というラテン語は、直訳すると「蔵書から」という意味で「蔵書票」のことを指している。個人蔵書(プライベート・ライブラリー)でつかわれてきたものだが、公共図書館(パブリック・ライブラリー)の蔵書も同様であろう。
世界最大級の公共図書館である NYPL(=New York Public Library)は、ニューヨークの観光名所である。大理石による白亜の殿堂というべき建築物は、かの大富豪アンドリュー・カーネギーの寄贈によるものだ。
(運営責任者による説明会 筆者によるキャプチャ)
だが、その内部がどうなっているのか、いかに運営されているのか、そして各分館も含めてコミュニティにおいてどのような機能をはたしてきたのか、このドキュメンタリー映画ではじめて知ったことも多い。
リチャード・ドーキンス博士やミュージシャンのエルヴィス・コステロなどの著名人や、作家や詩人などの著者を招いた読書会や討論会などのイベントも重要だが、なんといってもコミュニティ・センターとしての役割が大きいことも重要だ。人が集まる場所。教育の場であり、対話の場でもある。
さらにいえば、デジタル時代の図書館のあり方についての、図書館スタッフによる真摯な議論には傾聴すべきものも多い。スタッフの一人の発言にある「デジタル時代のアンドリュー・カーネギー精神」に、寄贈者の精神が現在もなお生きていることがわかる。
(ディスカッション中の運営スタッフによる発言 筆者によるキャプチャ)
ほぼ全編にわたって、さまざまな立場の人たちによる発言が「対話」として構成されている。自然音だけでBGMはないが、多様なバックグラウンドをもつ人たちの声が織りなす、ポリフォニーともいうべき世界をつくりだしている。
公共図書館のあり方について、いや「公共」(パブリック)の意味について考えることのできる、すぐれたドキュメンタリー映画であった。
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