『人生力が運を呼ぶ』(木田元・渡部昇一、致知出版社、2004)という本が面白かった。
あのハイデガー哲学研究者の木田元氏と、『知的生活』で有名な英語学者の渡部昇一氏が対談していたのか、それは知らなかった。
というわけで、たまたまその存在を知ったこの本を古本で購入して読んでいたらみたら、予想していた以上に面白かった。
木田元氏は渡部昇一氏より2歳年上で、ともに山形県の鶴岡市に縁のある人。
この対談の時点では初対面で、それぞれ75歳と73歳。戦中派だが異なる経験をしていながらも、共通点の多いことがわかって意気投合している。渡部氏が終始2歳年上の木田氏を立てながらの対談も、古風な感じがして気持ちよい。
■語学学習は「丸暗記」に限る
若いときの猛勉強ぶりが共通している二人だが、「第3章 学びの姿」と「第4章 学問する姿」では、ともに語学学習上の「丸暗記」の効用を強調している。
わたしも中学時代と高校時代には英語は「教科書の丸暗記」で習得したので、その言わんとすることにはまったく賛成だ。 とくに前置詞や定冠詞などの用法は丸暗記に限る。
木田氏の3ヶ月での外国語習得方法は、すさまじいまでの集中力と持続力であり、若くないとできない話だが、その通りだなと大いに納得。 木田氏はなんとこれで英語、ドイツ語、ギリシア語、ラテン語、フランス語の順番で独習でマスターしている。
渡部氏の「六十にして立つ」という話も興味深い。課題となっていたラテン語の完全習得のため、ついに60歳で一念発起して、タクシー移動による空き時間を利用して、丸暗記でマスターしたのだという。
両者ともに、けっして人に勧めているわけではないのだが、これを読んでいる自分は、尻を叩かれているような気分になった。これぞただしい意味での叱咤激励というものだろう。
■「寄り道」の効用
人文系の学問をする上での基礎づくりの話だけでなく、「寄り道の効用」も二人に共通している。
エリートコースを一直線というのとはまったく異なる人生行路が、「人間力」というか「人生力」を生むというのも、大いに説得力がある。敗戦後の木田氏の闇屋体験、渡部氏のテキ屋体験など、なかなか読ませるものがある。
すでに二人とも鬼籍に入って数年たつが、残念ながらタイトルと出版社で損をしているなと思う。「致知出版社」で「人生力」なんてタイトルだと、そういうのが好きな人でないと素通りしてしまうだろう。もったいない話だ。
出版社を代えて、タイトル変えて文庫化したら、売れる可能性があるのではないかなと愚考する次第。
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