ひさびさに出光美術館にいってきた。『池大雅 陽光の山水』という美術展を見るためだ。
東京は日比谷の帝国劇場の隣のビルに入っている。
池大雅(いけの・たいが 1723~1776)は、江戸時代中期の18世紀の京都に生きた文人画家。わたしの好みのひとつである。
同時代の京都には、著名な画家として伊藤若冲や円山応挙、与謝蕪村などがいる。 近年の日本では伊藤若冲(1716~1800)の人気が高くなっているが、池大雅の人気は底堅いものがあるといっていいだろう。川端康成もそのひとりで、収集もしていたらしい。
たまたま美術館にいった時間帯には、参観者のグループがいたためだろうが、学芸員(キュレーター)の熱のこもったガイドが肉声で行われていた。それだけ熱意を込めて研究している人もいるのだな、と。
実際に中国にいくことができなかった18世紀の日本で、中国の風物を描いたのが文人画の世界である。中国の画家たちによる作品を参考にしながらも、日本人による作品として制作したのが池大雅である。
全体が4章で構成された展示となっている。
第1章 光との戯れ ー 色と墨の競演第2章 大雅のユートピア ー 憧れの中国へ第3章 行動千里(せんりのみちをゆく)ー 日本の風光に学ぶ第4章 四季と八景の庭園 ー 大雅芸術の頂点
展示替えがあるのだが、わたしが訪問した際の目玉は、六曲一双の屏風2点であった。さすがにすばらしい。「西湖春景・銭塘江観潮図屏風」と「餘杭幽勝図屏風」である。
ズームインで細部を楽しみ、ズームアウトして全景を楽しむ。細部へのこだわりもまたすばらしい。これは屏風に限らず、池大雅の作品には共通している。
今回の美術展は「生誕300年」を記念したものだそうだ。「陽光の山水」というフレーズが意味するものは、池大雅がインドア派ではなくアウトドア派であったことを示唆したものだ。
いままで知らなかったが、池大雅は日本全国を旅しており、富士山や白山などに登っているようだ。日本の風景も作品として残してるのはそのためである。
池大雅といえば「釣便図」を想起するが、展示の入れ替えがあるため本日は実見することができなかったのは残念。実際は、かなりの小品である。
(「釣便図」 Wikipediaより)
とはいえ、渋みというよりも、軽みを感じさせる画法による作品多数を楽しむことができた。ことしは池大雅の「生誕300年」であり、「没後248年」である。
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・・京都の池大雅は、大坂の「知の巨人」木村蒹葭堂に入門している。
・・「とくに興味深いのが18世紀の「二都物語」。京都とヴェネツィアの二都物語。18世紀の京都は伊藤若冲を筆頭に「日本美術の黄金時代」。衰退期にあったヴェネツィア共和国は、平和を享受するなかで文化の花が開いた。ともに世界的な観光都市となって現在に至る。」
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