2024年4月17日水曜日

書評『キーエンス解剖 ー 最強企業のメカニズム』(西岡杏、日経BP、2022)ー いまの日本はこの高収益で高賃金の「道場」のような会社こそ見習うべきだ

 

 気になっていた『キーエンス解剖 ー 最強企業のメカニズム』(西岡杏、日経BP、2022)を読む。出版後すぐにベストセラーとなっていた本書は、ずっと読みたいと思っていた。  

キーエンスは、もともと2000年代のはじめから気になっていた会社だ。というのも、前職でファブレスの機械部品メーカーの取締役経営企画室長をやっていた頃、その存在を強く意識し、営業パーソンたちに強く意識するよう促していたのが、ミスミとキーエンスだったからだ。 

そんなキーエンスが、機械産業の枠を超えて一般のビジネスパーソンにも知られるようになったのは、たいへん喜ばしい。 

本書を読めばよくわかるが、平均年収2,200万円(!)という高収益企業は、昭和時代の表現をつかえば「モーレツ企業」というべきだろう。だが、「昭和テイストのモーレツ」とはまったく無縁である。飛び込み営業も、接待もいっさい無縁だ。 

徹底的に理詰めの合理主義、徹底した顧客志向顧客のニーズを先回したシーズの発掘と提案営業一人一人が経営者意識をもつが、チーム力を重視して情報共有を徹底するなど、数え上げたら切りがない。 

そんな企業だからこそ、高収益体質で高賃金が可能となっているわけだ。稼ぐ仕組みをつくり、手を抜くことなく徹底しているのである。顧客との win-win の関係が構築され、日々更新されつづけている。凡事徹底である。やりきるのである。 

顧客にとっての付加価値をつくりだすことを最重点においた企業姿勢だが、その付加価値をつくりだすのは、あくまでもヒトである。ヒトに対する投資は惜しまない投資すればリターンが生み出される。それこそ経営哲学というべきだろう。 

キーエンスという会社は、ある意味では製造業におけるリクルートみたいな存在だ。キーエンス自体は製造は行わず、協力企業に生産を委託する「ファブレスメーカー」だが、キーエンスを「卒業」して起業する元社員も増加中だという。 

とはいえ、創業経営者はカリスマであることを否定する。そこが昭和時代の初期のリクルートとの違いだろう。派手なことはいっさいやらず、社長がいなくても会社が回る仕組みをつくりあげた。 

そこで働くことで鍛えられ、高賃金を確保できるだけでなく、ビジネスパーソンとして、人間として成長できる「道場」のような会社。そんな企業こそ、いまの時代の日本には必要だ。 

もちろん真似るのはきわめて大変だが、そんな企業があるということだけでも、知っておくべきである。 


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目 次
プロローグ 語りかける化石たち 
第1章 顧客を驚かせる会社 
第2章 営業部隊が「先回り」できるわけ 
第3章 期待を超え続ける商品部隊 
第4章 「理詰め」を貫く社風と規律
第5章 仕組みの裏に「人」あり
第6章 海外と新規で次の成長へ
第7章 「キーエンスイズム」の伝道師たち
おわりに

著者プロフィール
西岡杏(にしおか・あんぬ)
日経BP記者。1991年、山形県酒田市生まれ。2013年に慶應義塾大学経済学部卒業後、日本経済新聞社に入社。大阪経済部を経て企業報道部へ。電機や機械、素材などの製造業のほか、医療やエネルギー、不動産・ホテルなどの分野を担当してきた。2021年4月から日経ビジネス記者。電機・IT・通信を中心に取材する。(書籍掲載のもの)。


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