2011年6月6日月曜日

書評 『裏がえしの自伝』(梅棹忠夫、中公文庫、2011 単行本初版 1992)-「わたしは・・・になれなかった」という風変わりな自伝


「わたしは・・・になれなかった」という「裏返しの自伝」-人生とはこういうものだ

 人生には無数の分かれ道があって、可能性自体はいくらでもあるのだが、選択の結果その多くを断念し捨てなければならない。誰にとっても、人生とはそういうものだ。

 目次をみると、「わたしは大工」、「わたしは極地探検家」、「わたしは芸術家」、「わたしは映画製作者」、「わたしはスポーツマン」、「わたしはプレイボーイ」となっている。

 だが、いずれも「わたしは・・・になれなかった」という意味を含みとしてもっている。つまり、ここにあげられたものになる願望と可能性がありながらも、結局は断念して、そうならなかったということだ。

 『裏がえしの自伝』というタイトルが、いかにも梅棹忠夫らしい。「オモテもウラもあわせてこそ人生」という姿勢で一貫している。だからこそ読んで面白いし、実に痛快な内容の一冊となっているわけだ。

 しかも、この本が書かれたのは、フィールドワークを中心とする学者であった著者にとって、きわめつきの挫折となった失明後のことである。多くの挫折を乗り越え、果たせなかった多くの夢について語る著者の姿勢からは、後悔というよりも、達観という骨太の姿勢がうかがわれる。

 読むと実に面白い本なのだが、長く絶版になっていたのが残念だった。このたび文庫版として復刊されたことは実に喜ばしい。「人生論」として読むこともできる本である。読めば、ほんとうの元気がでる。

 梅棹忠夫ファンはもちろん、そうでない人も、ぜひ多くの人に薦めたい。


<初出情報>

■bk1書評「「わたしは・・・になれなかった」という「裏返しの自伝」-人生とはこういうものだ」投稿掲載(2011年5月1日)
■amazon書評「「わたしは・・・になれなかった」という「裏返しの自伝」-人生とはこういうものだ」投稿掲載(2011年5月1日)




目 次

わたしは大工
わたしは極地探検家
わたしは芸術家
わたしは映画製作者
わたしはスポーツマン
わたしはプレイボーイ


著者プロフィール

梅棹忠夫(うめさお・ただお)

1920年、京都市に生まれる。昭和18年(1943年)京都大学理学部卒業。学生時代の白頭山登山および大興安嶺探検隊以来、調査、探検の足跡は、ひろく地球上各地にしるされている。京都大学人文科学研究所教授、国立民族学博物館長を経て、同館顧問・名誉教授。専攻は民族学、比較文明学。理学博士。平成6年(1994年)文化勲章を受章する。平成22年(2010年)7月に逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。



<ブログ内関連記事>

書評 『梅棹忠夫 語る』(小山修三 聞き手、日経プレミアシリーズ、2010)
・・この記事に<書評への付記>として書いた『裏がえしの自伝』のレビューを独立させて、今回の書評記事とした。あわせてご覧いただけると幸いです


 
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