2017年11月6日月曜日

トランプ大統領初来日(2017年11月5日~7日)-この機会に「 トランプ現象」とは何かについてあらためて考えてみる


トランプ大統領が初めて来日した。11月5日から2泊3日である。12日間に及ぶ初のアジア歴訪が、日本から開始したのは、じつに喜ばしいことであった。

これがもし中国だったとしたら、ぞっとしないではないか! いくら米中両大国による世界構造となりつつあるといっても、「同盟国」である日本の頭越しに中国を一番最初に公式訪問することになっていたら、日本の面子がつぶされるだけでない。それは深刻な安全保障上の問題となる。

その意味では、首脳同士の社交的要素が多いとしても、まず日本を訪問した意味は限りなく大きい。もちろん、日本にとっては北朝鮮問題米国にとっては貿易不均衡問題が最重要マターであろうが、「いま、そこにある危機」としての北朝鮮の核ミサイル問題で日米が共同歩調を確認したことの意味はきわめて大きい。

それが最終的に武力行使による戦争というオプションが選択されることになるとしても、だ。日本訪問のあとに韓国があり、おそらくメインイベントであろう中国訪問がある。そこで最終的に決定されることは何か? 世界は固唾をのんで見守っている。


■トランプ現象とはいったい何か?

さて、トランプ氏が昨年2016年の11月9日に米国大統領に選出されてから、すでに1年が立とうとしている。就任してからは早10ヶ月。

いわゆる「トランプ現象」なるものとは何か、なぜ発生したのか、についての疑問や好奇心に応えた解説記事や番組は、すでにその旬を過ぎた感がある。

いま現在は、トランプ大統領の破天荒な言動が引き起こしている激動をどうフォローするか、対策を立てるかというフェーズに入っているとともに、すでにロシアがらみの弾劾裁判の可能性もあり、トランプ後への期待(?)すら現れてきている状況だ。

だが、「トランプ現象」なるものの実体を解明する知的作業が終わりになっていいわけではない。なぜなら、この現象を正確に理解することが、現在の米国の状況を理解し、ひいては第3次グローバリゼーションの功罪について考えるために不可欠な作業となるためだ。

『結局、トランプのアメリカとは何なのか』(高濱賛、海竜社、2017)を読んだ。トランプ大統領が就任してから早10ヶ月。いつまで持つのかわからないが、いまのところまだ失脚していない以上、アタマのなかを整理しておく必要があるから。

著者は、「日経ビジネスオンライン」「JBPress」で連載を持っている在米のジャーナリスト。私もほぼすべてのコラム記事には目を通しており、いろいろ勉強になっている。

 「目次」は以下の通りだ。

第1章 トランプ大統領を産み落とした分裂国家の今
第2章 トランプとその人脈
第3章 トランプの「栄華盛衰記」
第4章 どうなる「ロシアゲート」疑惑と北朝鮮問題
第5章 トランプ以後のアメリカ

すでに連載コラムを読んでいる人も、書籍という形であらたに書き下ろした本書を読む価値はあある。そうでない人にとっては、「Q&A方式の問答体」で「ですます調」なので、気楽に読んだらいいと思う。できる限り可能な範囲で、最新情報でアップデートされている。

トランプ大統領がいつまで持つのか定かではないが、それでもトランプ大統領の登場は、米国だけでなく世界全体の潮目を変えることになったことは間違いない。

「トランプ大統領」そのものだけでなく、「トランプ現象」を理解する必要があるのはそのためだ。


■「トランプ現象」を理解するためのおすすめ4冊

トランプ関連本は大量に出版され、自分も何冊か読んでみたが、現時点でも読む価値があると思われるのが何冊かあるので、直接トランプに関係ないものも含めて紹介しておこう。


『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く』(金成隆一、岩波新書、2017)

⇒ 現地駐在の朝日新聞記者によるルポ。なぜトランプ大統領が誕生したのか「草の根のアメリカ」が肌感覚でわかる

『超一極社会アメリカの暴走』(小林由美、新潮社、2017)

⇒ 「0.1%の超富裕層」が支配するアメリカの現状。ウォールストリートとシリコンバレーが手を結んだアメリカの現実がもたらしたものは・・・

『ドナルド・トランプ黒の説得術』(浅川芳裕、東京堂出版、2016)

⇒ 「説得術」の達人トランプの秘密を解明。低レベルのビジネス書よりはるかに面白い分析

『トランプ現象とアメリカ保守思想-崩れ落ちる理想国家』(会田弘継、左右社、2016)

⇒ 「保守思想」といキーワードでトランプの特異性を考える中身の濃い内容


以上、4冊だけタイトルと簡単なコメントをつけておいたが、『結局、トランプのアメリカとは何なのか』(高濱賛、海竜社、2017)に戻ろう。

この本で重要な指摘は、トランプ以後を考えるにあたっては「ミレニアル世代」(18歳~35歳)の重要性を視野に入れなくては無意味だということ。

大統領来日の前日まで露払いとして日本に滞在していた長女で大統領補佐官のイヴァンカ氏も36歳、配偶者のジャレッド・クシュナー氏も同年齢。つまりは彼ら自身も「デジタル・ネイティブ」な「ミレニアル世代」だという指摘はさすがだな、と。

「アメリカは崩壊する」とかその手のタイトルの、「保守派」のおっさんたちによる嘆き節(笑)の本なんかいくら読んでも、「ミレニアル世代」の姿は見えてこない。

結局のところ、米国であれ、世界のどこであれ、これから先の時代をつくるのは「若い世代」だということを確認しておかなくてはならない。

この事実がもっとも重要なメッセージかもしれない。





<関連サイト>

「逆回し」で見えてくる「現在」の本質! 第2回 トランプ大統領が誕生した裏には、どんな潮流があったのか(佐藤けんいち、Hello Coaching、2017年10月23日)











<ブログ内関連記事>

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不動産王ドナルド・トランプがついに共和党の大統領候補に指名(2016年7月21日)-75分間の「指名受諾演説」をリアルタイムで視聴して思ったこと

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JBPress連載第5回目のタイトルは、「歴史家」大統領補佐官はトランプを制御できるか-ベトナム戦争の「失敗の本質」を分析したマクマスター氏(2017年8月1日)

起業家が政治家になる、ということ


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