2020年5月9日土曜日

独ソ戦の「戦勝記念日」に「前線の森にて」を聴く(2020年5月9日)


本日(5月9日)はロシアの祝日。独ソ戦の戦勝記念日だ。とくに今年は75年目の記念日となる。第2次世界大戦の「独ソ戦」は、史上最大の殺戮戦といっていいだろう。 

進撃するドイツに抵抗するソ連。後退しながらも持ちこたえた900日(!)近くに及んだ「レニングラード包囲」ドイツ敗退への分岐点となった「スターリングラード攻防戦」など、島国に生きる日本人には想像もつかないような激戦が5年にわたって続いたのである。 

最終的にソ連軍がドイツに突入して「ベルリン解放」(1945年5月2日)を行い、独ソ戦は終結したのであった。ソ連(のちのロシア)では「大祖国戦争」と呼ぶ。スターリンの命名だ。崩壊後のドイツが降伏文書に署名した5月9日が、ソ連にとっての「戦勝記念日」となった。 

そんな独ソ戦の最中、ソ連のパルチザン兵のあいだで歌われた愛唱歌が「前線の森にて」(В лесу прифронтовом)だ。ワルツ形式の歌謡曲。ロシア民謡ではなく、いわゆるソビエト歌謡。ここではロシア語の歌詞と日本語の訳が掲載されたバージョンを掲載しておこう。 これは、女優エカチェリーナ・グーセヴァが歌うバージョン。




個人的には、ロシアの歌姫アルスーが歌うバージョンが好きだが、アルスーはタタール系ロシア人。エカチェリーナ・グーセヴァのようなスラブ系ではなく、タタール系のアルスーがこのような愛国歌を歌う現在のロシアに関心がある。アルスーはこうしたソビエト歌謡でアルバムを1枚制作して、ロシアでは大ヒットになっている。




死闘の末にドイツを打ち負かしたソ連にとって、最後の戦いは帝国日本との戦争であった。独ソ戦に従軍した将兵と武器の移動に3ヶ月かかることを想定したスターリンは、最終決戦を8月に設定していた。





PS ユーラシア国家ロシアの東西観の違いが現れたか?

今年は新型コロナウイルスのパンデミックで、戦勝記念日どころではないというのがロシアの現状だ。おかげで安倍首相は訪ロできなくなり、北方領土問題で無用な譲歩を迫られる可能性も後退した。

当初は権威主義体制だから感染拡大を押さえ込んだのだと、ある種の敬意(?)をもって眺められたプーチン政権だが、国境を接する盟友・中国を含めた「東方」には厳しい態度で臨んだものの、「西方」の最大感染地イタリアのスキーリゾートから富裕層が持ち込んで一気に感染拡大となった模様だ。

あまり指摘されていないが、東西に広いユーラシア国家ロシアの「東方」に対する見方と「西方」に対する見方の違いが如実に反映したような気がするのである。

第2次世界大戦にあてはめて見れば、「東方」はノモンハン戦争で激突した帝国陸軍(さらにいえばシベリア出兵と日露戦争、中国共産党とのダマンスキー島紛争)「西方」は死闘を続けた独ソ戦である。

(2020年5月11日 追記)




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