2020年8月8日土曜日

書評『天災から日本史を読み直す ー 先人に学ぶ防災』(磯田道史、中公新書、2014)ー「現在」に生きる人が「近未来」に備えるため、先人の体験と教訓に学ぶ災害史は役に立つ


遅ればせながら『天災から日本史を読み直す-先人に学ぶ防災』(磯田道史、中公新書、2014)を読んだ。ベストセラーでかつロングセラーの新書である。
  
 磯田氏は、いま日本でもっとも有名な歴史家といっていいだろう。映画化もされた『武士の家計簿』(新潮新書、2003)が超ベストセラーになって、一躍時の人になった1970年生まれの歴史家だ。古文書マニアとしても知られている。

この本は、2011年の「3・11」に触発されて誕生したものとばかり思っていたのだが、どうやらそうではないらしい。著者自身が「あとがき」語るところによれば、18歳のときに最初に入った大学の「近世史」の講義で聴いた浅間山の噴火の話が、1つの大きなキッカケになったようなのだ。

「歴史は役に立つ」のだと確信して、歴史家への道を迷うことなく進むことに自信を持ったのだ、と。志の高さを感じさせるエピソードだ。しかも、ファミリーヒストリーとして、徳島県の牟岐の津波の話も原点にあるのだという。先人の体験と教訓に学ぶ災害史は、役に立つのだ。

「目次」は以下のとおり。


第1章 秀吉と二つの地震
第2章 宝永地震が招いた津波と富士山噴火 
第3章 土砂崩れ・高潮と日本人 
第4章 災害が変えた幕末史 
第5章 津波から生きのびる知恵 
第6章 東日本大震災の教訓 

いずれも読んでいて、じつに面白かった。 

基本的に、自分が暮らしている「地域」の過去の災害の歴史を知ることが関心の中心となるのは、生命財産を守るという観点から当然のことである。だが、それとは直接関係ないかもしれないが、日本列島全体の災害史について知っていくこともまた重要なことだ。

「南海トラフ地震」の被害が想定される太平洋岸、それにともなって発生が予想される富士山噴火の影響を被る関東地方の住民にとって、本書の有用性は言うまでもないだろう。だが、それだけでなく、土砂崩れ、地震と津波、台風と高潮は、日本列島のどこでも発生する可能性があることは言うまでもない。

こういった過去の事例をアタマの引き出しに入れておけば、ヨコ展開という応用が可能になるからだ。電気がつかえない状態では、ネット情報に頼ることもできない。いざというとき頼りになるのは、自分のアタマのなかに蓄積された知恵と知識だからだ。

2011年の「3・11」からすでに10年近く立ち、記憶も薄れがちないまだからこそ、あらためて防災史について知る意味があるのだ。





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書評 『複合大噴火』(上前淳一郎、文春文庫、2013、単行本初版 1989)-地球規模で発生する自然災害は容易に国境を越える

「天災は忘れた頃にやってくる」で有名な寺田寅彦が書いた随筆 「天災と国防」(1934年)を読んでみる
・・「寺田寅彦が言っていることは、以下のように要約できるだろう。 (要約) 「天災」は、日本という国にいる以上、避けて通ることはできない。文明が進めば進むほど、自然災害による被害は増大するだけでなく、たとえ一部の損害であっても、すべてがシステムのなかに組み込まれている以上、その被害はシステム全体に拡がる。しかも、国防という観点からみたら、天災が外敵以上に対応が難しいのは、「最後通牒」もなしに、いきなり襲いかかってくるからだ。

明治22年(1889年)にも十津川村は大規模な山津波に襲われていた-災害情報は「アタマの引き出し」に「記憶」としてもっていてこそ命を救うカギになる
・・「明治22年(1889年)奈良県十津川村を襲った山津波のことです。テレビの災害報道ではなぜか触れていませんが、いまから 112年前の1889年8月17日から4日間つづいた大雨で大規模な山崩れが発生し、168人が亡くなったそうです。その結果、2,500人の住民が集団離村して、北海道に新天地を求め、新十津川を切り開いた苦闘の歴史がある」

『崩れ』(幸田文、講談社文庫、1994 単行本初版 1991)-われわれは崩れやすい火山列島に住んでいる住民なのだ!
・・火山灰が堆積してできた日本の土地はもろくて崩れやすい!

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書評 『龍馬史』(磯田道史、文春文庫、2013 単行本初版 2010)-この本は文句なしに面白い!


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