台湾が新型コロナウイルス感染症の拡大を水際で防ぐことができた際、日本のようなマスク騒動を起こさずに済んだのは、「台湾には"天才"IT大臣がいるから」だ。そのように紹介されてから、日本でも急激に知名度が向上したのが、オードリー・タン(唐鳳)氏だ。
発言の数々は対談その他をつうじてネットで知ることができるが、『Au オードリー・タン-天才 IT 相7つの顔』(アイリス・チョウ/鄭仲嵐、文藝春秋、2020)でその生い立ちから現在に至る軌跡を知ることができる。この本は、台湾のジャーナリスト2人が、日本語読者むけに書き下ろした共著である。
35歳でIT大臣に就任し、現在まだ39歳のタン氏の人生を振り返ることは、「天才」とよばれた児童が経験することになる苦悩と葛藤を、いかに両親を筆頭に友人の理解のおかげで危機を乗り越えることができたかを知ることになる。「天才」というレッテルは便利だが、けっしてその人について知ったことにはならないのだな、と。
オープン化と透明化によって、政治上の意志決定のプロセスをすべて可視化することで、人びとの参加をうながし、ネットによる民主主義の可能性を拡張してきたのがタン氏の軌跡であり、台湾の民主主義の短いが内容の濃い歴史であることが、この本を読むとよく理解できる。
台湾の「いま」を知ることのできる好著でもある。ネット民主主義やLGBT法制など、日本人が思っているよりも、さまざまな面で台湾がはるかに進んでいることを知ることが重要だ。
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