2021年2月8日月曜日

映画『裏切りのサーカス』(2011年、英国・ドイツ・フランス)-渋い、じつに渋い。大人の映画だ

 
『裏切りのサーカス』(2011年、英独仏)を見た。渋い、じつに渋い。大人の映画だな。123分。  

映画の原題は、「ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ」(Tinker Tailor Soldier Spy)、昨年(2020年)12月に亡くなったジョン・ル・カレのスパイ小説である。原作は読んでない。 

舞台設定は、まさに冷戦まっただ中の1973年。ロンドン、当時は東側だったハンガリーの首都ブダペスト、東西世界の結節点にあって国際スパイ都市イスタンブール、そしてパリ。 

組織内で「サーカス」というスラングで呼ばれる「英国秘密情報部」(MI6)の情報漏洩や情報活動の失敗。その背景には、ソ連の二重スパイ「もぐら」(mole)が情報機関の上層部にいる。そう確信した情報部のトップの指示で、探索が始まる




暗号名は「ティンカー・テイラー・ソルジャー・・」。 日本語でいえば、修繕屋、仕立屋、兵隊。

タイトルにはでてこないが、貧乏人(Poorman)とあわせたこの4人と、主人公スマイリーをあわせた上層部の5人。この5人のうち少なくとも1人がスパイである。映画にはでてこないが、「第5列」(the fifth column)を示唆しているのだろう。第5列とはスパイを意味する表現だ。

『007』などスパイ映画にありがちな派手な活動も何もなく、ひたすら「二重スパイ」(double agent)の存在を追い詰めていくミステリースタイル。BGMも押さえながら、セリフの積み重ねで淡々と描いていくスタイル。

最後の最後の結論は? じつに渋い。渋すぎる。




この映画の原作は、「キム・フィルビー事件」という実際に発覚した事件をモデルにしたらしい。トップエリートであるケンブリッジ大学の学生たちの1人であったキム・フィルビー。共産主義に共鳴した1920年代。そしてかれらは、大義のためソ連のスパイとなる。

なぜトップエリートたちがソ連のスパイとなったのか? そのテーマを描いた青春映画『アナザー・カントリー』(1981年 Another Country)という英国映画を思い起こしながら見ていた。言うまでもなく「アナザー・カントリー」とはソビエトロシアのこと、ソ連に理想を見いだす土壌が形成された舞台はパブリック・スクールである。







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