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2015年3月14日土曜日

映画『イミテーション・ゲーム』(英国・米国、2014年)をみてきた(2015年3月14日)ー 天才数学者チューリングの生涯をドイツの暗号機エニグマ解読を軸に描いたヒューマンドラマ


日本公開が昨日はじまった映画『イミテーション・ゲーム』(英国・米国、2014年)をみてきた(2015年3月14日)。原題は The Imitation Game、下手な日本語訳にするより、カタカナのほうが好ましい。
  
英国が生んだ天才数学者でコンピュータの父アラン・チューリングの生涯を、ドイツの暗号機エニグマ解読を軸に描いたヒューマンドラマであり歴史ドラマである。114分を大いに楽しませてもらった。良質のエンターテインメント作品である。

エニグマ解読にかんする事実は長く秘匿されてきたが、第二次大戦終結から50年後に情報解除されているので、いまでは誰もが知る事実となっている。暗号解読について書かれた本なら必ずでてくるのがチューリングのエピソードだ。

では、アラン・チューリングとはどう人だったのか、wikipedia英語版から情報を引いておこう。「天才」の短い生涯における多大な業績が簡潔に要約されているからだ。

Alan Mathison Turing, OBE, FRS (/ˈtjʊərɪŋ/ tewr-ing; 23 June 1912 – 7 June 1954) was a British pioneering computer scientist, mathematician, logician, cryptanalyst, philosopher, mathematical biologist, and marathon and ultra distance runner. He was highly influential in the development of computer science, providing a formalisation of the concepts of "algorithm" and "computation" with the Turing machine, which can be considered a model of a general purpose computer. Turing is widely considered to be the father of theoretical computer science and artificial intelligence.

(私訳) アラン・マティソン・チューリング(1912~1954、大英帝国勲章、王立協会フェロー)は、英国が生んだコンピュータ・サイエンスのパイオニアで数学者、論理学者、暗号解読者、哲学者、数理生物学者、そしてマラソンランナーで超長距離走者であった。コンピュータ・サイエンスの発展においてきわめて影響力の大きな存在であり、アルゴリズムと機械計算の概念を定式化を、万能目的コンピュータのモデルとみなされている「チューリング・マシン」によって提供した。

この映画は、ナチスドイツによるロンドン空襲、ドイツの潜水艦 Uボートによる英国商船撃沈などで劣勢に立っていた大英帝国の最終的な勝利に貢献した天才数学者の、多大な国家予算を獲得して自作した万能コンピュータ(=演算機)を使用した暗号解読の苦闘を軸に描いたサクセスストーリーである。

「情報」をめぐる海軍、情報機関MI6、ソ連のスパイなどlとの攻防戦、戦争を勝利に導くための「情報」をめぐる駆け引きは、手に汗握るサスペンスものでもある。


ここまでは、チューリングの公的な生涯にかんするものである。

だが、私的生活においてホモセクシュアルであったことがチューリングの人生を破滅させたことが、この映画では描かれている。男子全寮制のパブリックスクールにおける酷いいじめと、それを救ってくれた同性の友人への恋愛感情。そして・・・。

いまから30年以上前に大ヒットした『アナザ・カントリー』(英国、1984)は、ソ連のスパイになった英国紳士を主人公にした映画だが、主人公たちがパブリックスクールで同性愛に目覚めた点は、『イミテーション・ゲーム』の場合と同様だ。異なるのは、同性愛だけでなく共産主義にも感化され、それがのちにソ連に忠誠を誓うことになっていった点である。

19世紀の作家オスカー・ワイルドも男色の罪で投獄され、人生を破滅させることになるが、英国ではなんと1967年までホモセクシュアルが罪とされていたというのは驚きである。チューリングも有罪判決を受けた1951年の2年後に41歳で自殺したとされているが、まことにもって不幸としかいいようがない。現在では公式に名誉回復されているのは、せめてものなぐさめか。


天才数学者を主人公にした映画には、数学者ジョン・ナッシュをモデルにした2001年制作のハリウッド映画 『ビューティフル・マインド』(A Beautiful Mind)がある。こちらは米ソの連戦時代に情報機関CIAにおける開発にかかわって精神の異常を来してしまった数学者の悲劇を描いている。

軍事のトップシークレットの開発にかかわった天才数学者たちの人生は、はたしてほんとうに幸せだったのかどうか、チューリングの場合もナッシュの場合も、天才ではない一般人にはわからにとしかいいようがない。ゲーム理論のフォン・ノイマンもまた然り。

映画のタイトルになっている「イミテーション・ゲーム」だが、チューリングが考案した「チューリング・テスト」にかかわるものである。これは、ある機械が知的かどうか、つまり人工知能であるかどうか、を判定するためのテストである。「イミテーション・ゲーム」(=模倣ゲーム)について wikipedia日本語版の記述を引用しておこう。

チューリングは「模倣ゲーム」(imitation game)というパーティーゲームからひらめいたテストを提案している。模倣ゲームとは、男性と女性が別々の部屋に入り、ゲストはいくつかの質問を書き、それに対するタイプ打ちの回答を読んでどちらが男性でどちらが女性か当てるというゲームである。このゲーム中の男性は、ゲストに女性と思わせるのが目的となる。チューリングは以下のように作り直した模倣ゲームを提案している。

映画のなかでは「チューリング・テスト」そのものは登場しないが、「イミテーション・ゲーム」という文言や、それに類似した推論方法については登場する。その意味では、この映画そのものもゲームであり、人生もまたゲームそのものだ。


昨日(2015年3月13日)には、物理学者ホーキング博士を描いた『博士と彼女のセオリー』(The Theory of Everything、英国、2014年)も同時に日本公開されている。そもそも突出した数学者や物理学者にはちょっと変わった人が少なくないが、チューリングも世代の異なるホーキングもともに英国人だ。 
  
ところで、本日3月14日(土)は、3.14にちなんだ「円周率の日」。映画のプロモーションは本日から始めたほうがよかったと思うのにねえ。映画会社には理系的発想がないのかな?







<関連サイト>

映画 『イミテーション・ゲーム』 公式サイト

The Imitation Game - Official Trailer - The Weinstein Company (英語・字幕なし)


*たとえば、『デジタル・ナルシス-情報科学パイオニアたちの欲望』(西垣通、岩波現代文庫、2008)の第2章はチューリングにあてられている。





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