『本で床は抜けるのか』(西牟田靖、中公文庫、2018)を読むと、実際に「本で床は抜ける」ことが実際にあったようだ。この本にその実例が紹介されている。
2011年の「3・11」の東日本大震災で「本で床は抜ける」かもしれないと危惧を抱いたノンフィクション作家は、そのテーマで取材を開始することになる。企画が通って連載が決まったからだ。
あまり巧い作家だとは思わないが、テーマには興味があるので最後まで読んでみた。蔵書に埋もれて亡くなった評論家の草森紳一氏の蔵書の行方も取材されている。私設図書館を創ってしまった人たちの話もでてくる。大震災後に書庫を建ててしまった大学教授の話もでてくる。
探検家でノンフィクション作家の角幡唯介氏は、この文庫版の解説でこう書いている。「本で床が抜けるのかを検証するためにはじめた取材は、最終的に床どころか、彼の人生の底が抜けてしまって終焉を迎えたのである」。じつに切ない話ではないか。
著者ほどではないが、本が多すぎて似たような切ない(?)体験をもつ自分も、同病相憐れむというか、いまだことばにしにくい感情を抱いたまま現在に至っている。
本は増殖する。知らないうちに増殖している。1冊1冊はたいしたことなくても、気がついたときには増殖しているのが蔵書。蔵書をを整理するのは思った以上に大変だ。本を買う際に、維持コストについて考えないことがその原因だ。
「3・11」から10年になった。震災対策という観点から、蔵書整理の必要をひしひしと感じている。2011年3月11日に大規模に本が崩れて以来、本格的な整理を行っていない。やらなくちゃ、ね。
著者プロフィール西牟田靖(にしむた・やすし)1970年、大阪府生まれ。ノンフィクション作家。アジア・太平洋諸島の元日本領土、北方領土や竹島といった国境の島々をテーマにした作品で知られる。著書に『〈日本國〉から来た日本人』『ニッポンの国境』『ニッポンの穴紀行』『わが子に会えない』など。
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