恐るべき事故が昨日午後、札幌の古書店で発生した。
本棚が転倒して、10代の姉妹と従業員が生き埋めとなった事故である。19歳の従業員と、14歳の姉は比較的軽度の怪我で済んだらしいが、10歳の妹が倒れてきた本棚の角で胸を強打し、現在も意識不明の重体であるという。
事故の発生したデイリーブックスは、いわゆる従来型の古書店ではなく、ブックオフのような新古本とマンガ、CD、DVD、ゲームなどを扱うタイプの古書店のようだ。
インターネットのTV局が提供しているVOD映像で見る限り、事故現場はまさに"本の海"ある。この本の海に生き埋めになったのかと思うと、いたたまれない思いだ。
高さ210cm(・・高さ110cm幅90cmのボックスの上に同じ幅の高さ100cmボックスを重ねていた)で、横に計6台ずつボルトでつなげて組み立てるタイプだったようだ。幅は5.4mになる。
この本棚3列がドミノ倒しのように姉妹の上に倒れかかり、本の海の中に閉じ込められた、ということである。
本棚と本棚の間隔がたった50cmというのは、これは正直いって狭すぎる(・・付記:その後の報道では60cm)。
本棚はおそらく奥行きが35cmだと、真ん中に背板がって両面から本を一列に収納するタイプだと思うが、それにしても大量の本を詰め込んだものだ。6,000冊の本の海に埋まったら、子供でなくても生き埋めになってしまうだろう。店内には全部で2万6千冊以上あったという。よくそれだけ詰め込んだものだ。
たとえ本の海に生き埋めにならなくても、落ちてきたハードカバーの単行本のカドで打撲傷となる可能性もある。
私も先日、整理中に手を滑らして単行本を落としてしまい、あっと思ったその瞬間(・・なぜかこういう瞬間はスローモーション映像のように見えるものだ)ののち、裸足の親指の上に落として実に痛い思いをしたばかりだ。内出血のあとが未だに残っている。
自分が落とした本で怪我をしても、その事故責任はあくまでも自己責任だが、商売でやっている書店で今回のような事故を起こすと、業務上過失傷害の対象となる。
地震のような自然災害は、損害保険の世界では、force majeure または act of God といって免責事項となるのが通常である。日本語では不可抗力と訳している。
今回の事故は、地震による二次災害ではないので、不可抗力とはいえず、あくまでも人災である。店側の過失の可能性が高い。
自宅に客を招いた際に、本棚が倒れて本の海に生き埋めになったら・・・考えるだけで恐ろしいな。しかし、こういうケースも想定しておかねばならない。
以前にこのブログで、草森紳一の『本が崩れる』の話に触れたが、本だけでなく、本棚自体が恐ろしい凶器になりうるということ、これは心しておかねばならない。
もちろん、私の本棚は転倒防止策はキチンと講じてありますよ。
でも本当は、本棚の本がダイブして飛び出さないような対策を講じておかないいけないんだなあ。こちらのほうが可能性としては高い。
P.S. 「本棚等の転倒防止策について」(消費者庁)
消費者庁から、「本棚等の転倒防止策について」という文書が発表された。本棚転倒の下敷きになった女の子は、いまだに意識不明とテレビ報道で見たが、ほんとうに痛ましい事故である。消費者庁の指針は家庭でも有用な指針なので必読だ(2010年12月2日 記)。
<関連サイト>
何冊で床抜け?-「本崩れ」にまつわる意外な難問【前編】 (建築&住宅ジャーナリスト 細野透 「SAFTY JAPAN」 2013年 12月10日)
何冊で床抜け?-「本崩れ」にまつわる意外な難問【後編】-「4万冊の書庫の家」づくりのポイント (建築&住宅ジャーナリスト 細野透 「SAFTY JAPAN」 2013年 12月16日)
(2013年12月20日 追記)
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