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2009年10月1日木曜日

『随筆 本が崩れる』 の著者・草森紳一氏の蔵書のことなど




昨日(2009年9月30日)朝のサモアの大地震に続き、昨日夜のスマトラ島地震で数千人が生き埋めになっているとのことだが、私もいまこの状態で M8.0規模の大地震に巻き込まれたら、間違いなく本で生き埋めになるだろう。

 むかしワンルーム・マンションに住んでいたことがあったが、その時はうずたかく積み上げた本のために、最終的に部屋の5分の4くらいが本で埋まってしまっていた。寝るスペースとして布団一枚分しかなくなってしまい、TVも本の中にかろうじて収まっているというかんじだった。本棚は積み上げた本に埋もれて見えなくなってしまっていたのであった。

 本が崩れたら間違いなく生き埋めになっていたところだ。

 引っ越す際には、一度にダンボール箱の梱包作業ができないので、なんと二回にわけて引越の荷物だしを行ったものである。

 いや結局、今回も同じ事か・・・部屋に入れるのに二回かかっているのだから・・・

 昨年の春に亡くなった都会の仙人、作家・草森紳一氏の晩年のエッセイに『本が崩れる』(文春新書、2005)という、タイトルそのままの内容の本がある。同病相憐れむといったかんじでこの大先輩のことを想像していたのだが、案の定、草森氏は本に埋もれて亡くなったらしい。死因は心不全とのことだが、発見まで死後数日たっていたとのことである。一般人は孤独死というだろうが、草森氏本人にとってはきっと"男子の本懐"に違いない。

 2DKのマンションの一室に満杯になった本はなんと3万冊、しかしながら幸いなことに、有志のチカラによって草森氏の死後に整理する作業が行われている。故人の遺徳というべきであろう。いや、純粋に好奇心から、草森紳一の"脳内探検バーチャル・ツアー"をしたいという情熱かもしれない。

 フランスのアナール派歴史学の研究に、中世フランスの修道院の蔵書目録調査をもとに書かれた論文がある。蔵書は、その所有者が何を考えたかをある程度までさらしてしまうからだ。だから個人蔵書はあまり人には見せたくないし、蔵書整理する際もできるだけ人に手伝ってもらいたいとは思わないものなのだ。死んでしまえば話は別だろうが。草森氏の場合もおそらく同様だろう。

 草森紳一蔵書整理プロジェクトによる「崩れた本の山の中から」を参照されたい。また草森紳一の人物については「白玉楼中の人:草森紳一」を参照されたい。この人の書いた代表作『ナチス・プロパガンダ 絶対の宣伝 全4巻』(番町書房、1978~79)という本は前人未踏の業績であろう。

***

 実は私も大学3年の時、故人の個人蔵書整理のアルバイトをしたことがある。ある名誉教授の蔵書を大学図書館が一括して買い取ることとなり、K書店がその整理を代行することとなったのだが、ひょんの偶然からいわれるがままに、名誉教授宅から蔵書を運び出すアルバイトをすることになったのだ。

 その直前までやっていた大学の付属経済研究所の図書整理のアルバイトが終了したときに、そのままリクルートされたのである。余談だが、大学の事務員には、英国のアフタヌーンティーではないが、午後3時に休憩時間が設定されており、われわれアルバイトの学生も当然のように休みをとるようにいわれた。お茶菓子いただきながら、なんという公務員天国であることか(!)、と思ったものだ。

 私が入学したときにはすでに退官されて久しい方だったので詳しくは知らないが、名誉教授の専攻はギリシア哲学で専門はアリストテレスであった。

 書棚から機械的に本を取り出してはダンボール箱に詰めていくのだが、一冊一冊丁寧に手作りのカバーをかけられた洋書からカバーを引きはがす作業は、なんだか気の毒なというか、いたたまれない気持ちにもなったのだが、蔵書も持ち主が死んでしまえば単なるモノにしか過ぎないのだろう。その日の作業が終わりに近づいた頃は、私は何の感慨もなく機械的に箱詰め作業をしていたのであった。

 草森紳一とは違って名誉教授の蔵書はキチンと書棚に整理されて並んでいたが、本を全部取り出したあとの書棚はすっかりキレイさっぱり、といったかんじになった。それをご覧になったご遺族もたいへん満足されていたようで、貧乏学生の身分では滅多に食べられないような高級な出前の鰻重(うなじゅう)を、アルバイト学生二人にリビングルームで昼食にごちそうしていただいたことを、いま思い出した。

 本人にとっては重要な蔵書も、遺された家族にとっては売ればカネになる資産でしかなかったのか、ということかもしれない。もっとも名誉教授の場合は、売ればカネになるような中身のある蔵書であったのはご遺族にとっては幸いだったかもしれないが。

 このときのアルバイトはバイト料はたいしたことはなかったが、たいへん貴重な経験となった。K書店の若い担当者と営業車のなかでいろいろ会話をしたのだが、出版社含めてマスコミに就職する気持ちはまったくなくなってしまった。出版社といえども、大学の先生からみれば、出入り業者にすぎない、と感じてしまったためだろうか・・・。世の中というものがわかっていなかったいえば、それまでのことであるが。

***

 『書斎曼荼羅-本と闘う人-』(磯田和一=絵と文、東京創元社、2002)という、物書きのお宅を訪問して、書斎の書棚をイラストと文章でルポした本がある。

 物書きの方々の本とのつきあいはホントにたいへんなようで・・・。このなかにはマンガ家・水木しげる先生の熱狂的ファンである、小説家の京極夏彦氏の話がでてくる。京極氏も本にかんしては若い頃、私を上回る経験をしていたらしく、思わず微笑んでしまう。
 
 本というものは、増えるのは1冊づつなのだが、気がついたら恐るべき量になっているものである。ああ、なんでこんなに増殖してしてしまうのか・・・まるで熱帯性植物ではないか・・・


 本の山の中で寝起きする生活は、図書館のなかで生活したいという、むかしの自分の夢の実現(?)だったのだが、しかしいざ実現してみると、暴走の止まらないエレベーターはないが、本の増殖を制御するのはきわめて難しい、と何度も思わざるをえない。
 
 人間らしい生活を取り戻すために、またふたたび"本との闘い"が始まった。一日も早い復旧を願う。いや、他人ごとではないので、自力で復旧作業をやらなくてはならない。

 現在のところ、本はまだダンボール箱の中にはいったままなので、そう簡単に崩れることはないだろうが、それにしても廃棄売却処分のための選別作業を行わなければならないので(・・物理的なキャパシティの問題である)、考えただけでため息つきたくなる。水木しげるマンガの登場人物ではないが、フハッー、ですなあ。

 いやいや"自力更生"、である。この点にかんしては、60年前の10月1日にさかのぼって"毛澤東主義"でいかねばならんな・・・

 しかし、文化大革命時代の紅衛兵、ではなくて本には"造反有理"と叫ばせてははならん。選別にあたっては、きびしい態度で臨まねば・・・

 もちろん草森紳一の『中国文化大革命の大宣伝 上下』(芸術新聞社、2009)は、いうまでもなく廃棄するつもりはない。






<関連サイト>

何冊で床抜け?-「本崩れ」にまつわる意外な難問【前編】 (建築&住宅ジャーナリスト 細野透  「SAFTY JAPAN」 2013年 12月10日)

何冊で床抜け?-「本崩れ」にまつわる意外な難問【後編】-「4万冊の書庫の家」づくりのポイント (建築&住宅ジャーナリスト 細野透  「SAFTY JAPAN」 2013年 12月16日)


(2012年12月20日 追記)
(2021年3月3日 情報追加)


<ブログ内関連記事>

本棚が倒れて"本の海"に生き埋めになるという恐怖が現実に・・・(2009年10月14日)・・札幌の書店事故について


(2021年3月3日 情報追加)


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