先日のことだが、米国のシカゴで火災に見舞われたビルの5階からクロネコがジャンプして無事着地するという事件(いや快挙!)があったことが動画ニュースで報道されていた(2021年5月15日)。
「決死のダイブ」と言われているが、それはあくまでも人間の考えであって、そもそも無謀に飛び出す性質をもつネコのことだから、おそらく何も考えずにダイブしたのだろう。ネコの交通事故死が多いことから、そう考えるのが自然だろう。
だが、このクロネコは、スカイダイビングのように両手両脚を拡げて飛び出しているので、空中では1回も捻りは行っていない。
なにかいい動画がないものかと探していたら、見つかったのが「子猫を救え! 地上20m...はしご車も出動」(FNNプライムオンライン 2019年11月12日)というタイトルの動画記事だった。
どんな内容だったか、動画につけられたキャプションを引用しておこう(*太字ゴチックは私による)。
高知市内の野球場に到着したのは、3人の消防隊員。彼らに課されたのは、救出のミッション。長いはしごを立てた観客席の先にいたのは、1匹の子ネコ。地上20メートルで行われた2日がかりの救出劇、その一部始終の様子をとらえた。高知市内の野球場で、地上およそ20メートルの高さにあるネットによじ登ってしまった子ネコ。駆けつけた消防隊員が綱に手をかけ、ワイヤの上をつたっていく。まさに、命がけの救出作戦。しかし、気配を察した子ネコは離れていってしまった。子ネコが鉄柱に移動したタイミングで、再び救出を試みる消防隊員。すると...ネコはネットを駆け下り、急降下。一瞬、ヒヤッとする場面も。この日は、保護を断念せざるを得なかった。それからひと晩たち、翌日、出動したのは「はしご車」。消防隊員が、保護用の網を慎重にかぶせ、保護に成功と思った次の瞬間...。子ネコが網から飛び出し、真っ逆さまに落下。息をのんだ、その直後...。
消防隊員「子ネコは落ちてしまったけど、元気に走って逃げていきました」 よく見ると、確かに前足から無事、着地していた。2日間にわたる救出劇は、見事な着地で幕を閉じた。
動画は時間がたてば削除される可能性もあるので、スロー再生のビデオを、さらに0.5倍速で再生し、キャプチャして動作を分解してみた。いわゆるモーション・スタディとして。
以下、コネコが飛び出してから着地までを見てみよう。パラパラまんがとして楽しんでほしい。動画だと、ギャラリーの悲鳴とともに過ぎ去った、ほんの一瞬の出来事である
ここで1回転目。けっして「真っ逆さまに落下」していない!
2回転目
ここで3回転目が始まる!
その後の着地シーンも動画にあった。
なるほど、往年のアニメ『いなかっぺ大将』(1967年~1972年放送。川崎のぼる原作)に登場する「にゃんこ先生」の「キャット空中三回転」は本当だったのだなと実感した次第。このアニメは、昭和40年代に小学生だった人なら、よく知っていると思う。
ただし、すべて成功するわけではないのである。あくまでも、ネコが自分の意志で飛び出したときにには、着地に成功することもある、ということだ。そもそも太ったネコだと着地はムリだろう。
(上記の動画よりキャプチャ)
よい子の皆さんは、間違っても「キャット空中三回転」を真似したり、ネコを20mの高さから落としたりすることはしないように!
<参考>
『コマの科学』(戸田盛和、岩波新書、1980)の「第11章 回転のあれこれ」に「ネコの落下」という一節がある。
要するに、ネコは脚を身体から遠ざけたり、近づけたりして、前半身や後半身の慣性モーメントを別々に時々刻々と変える。慣性モーメントの大きな部分は回転させにくいから、慣性モーメントの小さい部分だけを大きく回すことができるのである。(P.161)
ネコは、通常は背中から落ちることはないのである。
この実験においては、何メートルから落としたか書かれていないが、人間の背の高さ程度なのであろう。
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