最近よく「代替肉」や「人工肉」についての話題を耳にするようになった。欧米では当たり前のようになってきているのだ、と。
動物を殺して食べるべきではないという「ヴィーガン」(=ヴェジタリアンの最右翼)という観点、家畜が出す二酸化炭素排出量を減らすべきだという観点、あるいは穀物を爆食する家畜による肉消費を抑制するといった食糧問題の観点など、さまざまな立場からのものが背景にある。
日本でも「人工肉」をつかった料理が、北欧ライフスタイル店 IKEAに併設のレストランで提供されているという記事を読んだこともあり、どんなものか実際に食べてみたいと思っていた。IKEAなら船橋にあるからだ。IKEA Tokyo-Bay は IKEA の日本市場展開の司令塔である。
そこで本日、ひさびさに IKEA Tokyo-Bay に行って、実際に食べてみることにした。「プディングの味は食べてみなければわからない」(The proof of the pudding is in the eating.)というコトワザが英語にあるしね。
「人工肉」をつかったメニューとは、「プラントボール」のことだ。
肉(=ミート)が原材料の「ミートボール」に対して、植物(=プラント)が原材料の「プラントボール」。
日本人の私にとって不思議でならないのだが、「ミートボール」は、なぜかスウェーデン料理の定番のようで、むかしからIKEAでは売っていた。そのミートボールの「人工肉」バージョンが「プラントボール」というわけだ。
そのIKEAレストランだが、そこにたどりつくまでが一苦労だった。迷路のような店内を矢印にしたがって歩きに歩いて、ようやくレストランにたどりつくのだが、こんなに歩かされるとは。IKEAの導線の驚異(!)のことはすっかり失念していた。
本日14時前であったが、IKEAレストランは2/3くらいは埋まっていた。しかも、「プラントボール」を注文している人が少なからずいた。なるほど、と思ってみたりもする。
さて、実際に食べてみての感想だが、「プラントボール」の見た目は「ミートボール」と変わらない。しかも、食感もミートボールそのままだ。黙って出されたら、それが植物由来の材料でつくられた「人工肉」だとは、おそらく誰も気がつかないだろう。
リンゴジャムとからめる食べ方も、ミートボールにおなじだ。「プラントボール」にグリンピース、リンゴベリージャム、付け合わせのマッシュポテトで「ベジタリアン」となる。材料はすべて植物なので、肉類は絶対に食べないという「ヴィーガン」である。
なるほど、ここまで「ミートボール」の食感を出すことに成功しているのであれば、「プラントボール」を選択する人が少なくないのも当然だな、と思う。
ちなみに、お値段だが、「プラントボール」はレギュラーサイズの8個(+マッシュポテト、リンゴベリージャムで一皿)で税込み499円、「ミートボール」はおなじ構成で599円と、「プラントボール」のほうが低価格でもある。価格面で優位性があるのは、販売政策というよりも原価が安いからだろう。
というわけで、「人工肉」は間違いなくメインストリームになると IKEA で実感した。
とはいえ、日本では欧米に比べてペースが遅いだろうな、とは思う。
野菜中心の食事という話が出てくる前に、肉の赤身を食べれば糖質制限になって健康的に痩せられるなどという「妄想」が、当たり前のようにはびこっている国だからなあ。
もともと日本には、「精進料理」という正真正銘のヴィーガンの伝統があるのにねえ・・。
ただ、先回りして思うのは、「人口肉」は、あくまでも過渡期の食材ではないか、ということだ。
究極は、肉食の廃止であるが、そこまでいくには時間がかかるだろうし、まずは慣れ親しんできた「肉のような食感」を普及することが「移行期」には必要だからだ。
おそらく、肉食、人工肉、ベジタリアンが平行して定着していくのであろう。TVとラジオと新聞、そしてインターネットが共存しているように。あるいは、アルコール飲料のビールとノンアルコールのビール、そして炭酸飲料が共存しているように。
そんなふうに考えるのが自然ではないだろうか。
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イケア、執念のサステナブル経営 代替肉に本気のワケ(日経ビジネス、2022年12月14日) ・・・原材料価格高騰でも大量生産によって低価格での提供が可能だという。IKEAの本気度
(項目新設 2022年12月14日)
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