「アタマの引き出し」は「雑学」ときわめて近い・・日本マクドナルド創業者・藤田田(ふじた・でん)に学ぶものとは?

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2021年1月28日木曜日

書評『イケアの挑戦-創業者(イングヴァル・カンプラード)は語る』-IKEA 創業者の知られざるライフストーリーをスウェーデン近現代史のなかで描く

 
昨年2020年12月のことだが、ようやく8年かかって1冊の本を読み終えた。8年かかったというよりも、8年前に読み始めて中断したまま、8年後にふたたび最初から読み始めて読み終えたというのがほんとうのところだ。 

その本のタイトルは、『イケアの挑戦 創業者(イングヴァル・カンプラード)は語る』(バッティル・トーレクル、楠野透子訳、ノルディック出版、2008)。スウェーデン生まれの、家具量販店を中核にしたユニークな「ライフスタイル小売業 IKEA」 とその創業者のライフストーリーだ。

IKEA とは、創業者イングヴァル・カンプラード(I.K.)と、自分が育った農場のエルムタリュード(E)、出身地のアーギュンアリュード(A)の頭文字をあわせたネーミングだ。母音で終わる「イケア」は日本語みたいな響きがあって、日本語人には違和感がない。英語圏では「アイケア」発音する。

現在の本社はオランダにあり、複雑な株主構成によって「非上場」を貫いているグローバル企業だが、商品名のスウェーデン語だけでなく、原点であるスウェーデン南部の記憶がしっかりと刻み込まれているわけだ。けっして原点を忘れないことが、ユニークさを生む源泉となっているわけだ。「IKEA = 北欧家具」という連想は、その逆も含めて世界中で浸透している。 

イングヴァル・カンプラードといっても、関係者でなければ、すぐにIKEAの創業者だとすぐにわかる人は、きわめて少ないだろう。私もその一人だが、創業ストーリーというものは、洋の東西を問わず面白い。しかも、自伝ではなく、徹底的な取材をもとに作家が書いた伝記だけに、内容の信憑性も高い。 

この人も例に漏れず、きわだった個性の持ち主だったことがわかる。ある種の変人でなければ起業を成功させることはできないのである。創業者カンプラードが地元ではじめたビジネスは、保守的な業界との軋轢を生み、さまざまな妨害を受けながらも、消費者の圧倒的な支持を得て拡大していく。

根っからの商売人であったが、子どもの頃から「価格」と「価格差」に異常なまでの関心の強かったこの人が、廉価で機能的な家具をカタログ通販するビジネスを大規模小売業へと発展、さまざまな困難を乗り越えるなかで形成されたビジネスモデルが、1960年代におけるシンプルなライフスタイルという価値観の変化とうまく合致して、ヨーロッパを越えてグローバルな展開を可能にしていった。 

創業者カンプラードのライフスタイルは、アメリカの大規模小売業ウォルマート(Walmart)の創業者サム・ウォルトンとよく似ている。億万長者になっても、ケチでシンプルなライフスタイルが貫かれている。 

巻末に付録として収録されている「ある家具商人の書」が重要だ。創業者自身が書いたものだ。内容は大きくわけて「1. イケア製品-当社のアイデンティティ」「2. イケア精神-力強く生き生きとした毎日」となる。IKEAのアイデンティティと理念が集約されており、大いに納得する内容である。

そしてまたこの本は、ドイツからスウェーデンに移民した家族に産まれた子どもがたどったスウェーデン現代史でもある。厳しい風土が人間を鍛えるのである。入植した頃は、石ころだらけの痩せた土地だった。

中立国であったため、二度の世界大戦を経験せずに済んだスウェーデンだが、第二次大戦中に「新スウェーデン主義」というナチズムの運動にかかわった創業者の過去が蒸し返されるなど、日本ではあまり知られてないスウェーデン現代史も興味深い。とはいえ、あまりぴんとこない話も多々あることも否定できないが。 

基本的に郊外型立地のIKEAだが、昨年2020年に入ってから都心型の店舗展開を始めたとニュースになっている。日本におけるIKEA発祥の地は東京ベイエリアの船橋であり、私自身 IKEAには特別な親しみを感じてきた
(*第1回目の日本進出は失敗したが、2度目は成功。IKEAは船橋と縁が深いのだ。IKEAは駅をはさんでららぽーとの反対側にある)。 

「デザイン重視」だが、廉価で機能的というIKEAを貫く合理主義は、北欧ならではのようだ。デンマークの低価格雑貨店が日本から徹底とのニュースもあるが、低成長時代には「北欧」スタイルが日本にもフィットしてきたのかな、という印象がある。 

しかも弱肉強食のアメリカ型資本主義ではない、ファミリーを重視した北欧型の資本主義。日本が向かうべき方向は、後者ではないだろうか。そんなことも考えてみる。





目 次 
前書き
発端には堆石(たいせき)があった
第1部 一人の移民と彼の息子 1894年から1943年 
第2部 頭角を現した起業家 1943年から1953年 
第3部 やっかいな資本家 1953年から1973年 
第4部 出移民 1973年以降 
第5部 転換期のリーダーシップ 
第6部 大いなる飛躍 市場のほとんどは手つかずのままだ! 
第7部 イングヴァル・カンプラードとは?イケアとは? 
「ある家具商人の書」
イングヴァル・カンプラードとイケアの主要年史 
国ごとのイケア店舗(2006年現在) 

著者プロフィール
バッティル・トーレクル(Bertil Torekull)
スウェーデンで著名な作家、ジャーナリスト。日刊紙「スヴェンスカ・ダーグブラーデット」(SvD)「週刊ビジネス」(Veckans Aff¨arer)などの編集長を務める。日刊紙「今日の産業」(Dagens Industri)などを創刊。ビジネス関連その他、著書多数。




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