2021年11月8日月曜日

『超訳ベーコン 未来をひらく言葉』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、2021)出版に際して行われたインタビューの全文を再録します


『超訳ベーコン 未来をひらく言葉』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、2021)の出版にあたって、出版元のディスカヴァー・トゥエンティワンのイベントのためにインタビューを受けました。以下に、その質疑応答の全文を転載いたします。ご参考にしていただくと幸いです。

なお、インタビューが行われたのは、ことし2012年11月1日のことですので、現時点の最新情報とはズレがある箇所もありますので、あらかじめご了承ください。


****************


(Q1)佐藤さまからみて、フランシス・ベーコンの思想の魅力はどんなところにあると思いますか? 

(A)原稿が本の形になってから何度も読み返して見ましたが、なぜ、いまのいままで「超訳シリーズ」にベーコンが取り上げられることがなかったのか不思議でしょうがない、そんな感想を強くもちました。 

どうやら「哲学者」というラベリングが、ベーコンを敬遠させる理由になっていたのかもしれません。「哲学者ベーコン」は、同時に「政治家ベーコン」でもあったという点が、魅力的なのです。観念論や机上の空論を語る人ではなく、実践的な思想を語ってのが魅力なのです。 

今回の『超訳』は、ベーコンの『エッセイズ』を中心に収録しましたが、日本語でいう随筆というよりも、むしろ人生訓や処世訓に満ち満ちた内容の本です。その意味では、『超訳シリーズ』に入っているモンテーニュよりも、むしろグラシアンのほうが近いと言っていいでしょう。「政治家ベーコン」もまた、『君子論』のマキアヴェッリから大いに学んでいます。 

このほか、哲学書である『学問の進歩』からもセレクトしましたが、なんでこんな話が哲学書に出てくるのかと、いうような話も多々あります。たとえば「099」のエピソードです。思わずツッコミを入れたくなるような内容です。ぜひお楽しみください。



(Q2) 特に好きな(思い入れのある)名言とその理由を教えてください。 

(A)人それぞれによって違うと思いますが、ここではツイッターでディスカヴァー・トゥエンティワンの「中の人」が取り上げていない名言を2つあげておきたいと思います。 

「154 読書によって、充実した人になる。会話によって、機転の利いた人になる。書くことで、正確な人になる」 

わたし自身大いに賛同しています。みなさんにも、大いに見習って欲しいものだ、と思います。 

「106 友人に話せば喜びは二倍に、悲しみは半分になる」 

失脚して絶頂から真っ逆さまに転落し、失意のなかにいた「政治家ベーコン」の真情が吐露された文章だといっていいでしょう。ほんとうに大切なことは、友人の数を誇るよりも、一人でも真の友人をもつことなのです。 



(Q3) 訳出にも大変苦労されたと伺いました。一番苦労したのはどの点でしたか? またその理由を教えてください。 

(A)まず英語じたいの問題があります。ベーコンはシェイクスピアと同時代の人でした。 ベーコンの英語はシェイクスピアよりは理解しやすいですが、それでも17世紀の段階では、いまだに英文法も確立していませんでした。また、ボキャブラリーの点でも、理解しにくい点があって苦労させられました。 

具体的にいうと、21世紀の現在つかわれているのとは違う意味でつかわれていることばが多々あります。たとえば、現在では「模擬実験」を意味する simulation(シミュレーション)は、17世紀には「虚偽」という意味でつかわれていました。21世紀の「常識」で読むのは危険な点もあるのです。 

文体についていえば、行替えがほとんどない文章で、しかも簡潔すぎて内容を把握しにくいものも多々あります。そんな文章は可能なかぎり行替えを行い、本文のなかに必要最小限の説明を加えました。 



(Q4)本書をどんな人に読んでもらいたいと思われますか? またその理由を教えてください。 

(A) この本は、21世紀の現在にも十分通用する「自己啓発書」になっていると思います。 なによりも「人生訓」や「処世訓」として、ビジネスパーソンに読んでほしいと思います。もちろん、ビジネスパーソンに限らず、組織のなかで生きている人もおなじです。仕事は一人ではできないし、仕事だけでなく人生全般においても、人間関係は避けて通れないからです。 

「哲学者ベーコン」は「政治家ベーコン」でもありました。いわゆる二世政治家でしたが、父親が早く死んだため、かなり苦労してキャリアを構築してします。そのベーコンが語る「運命の建築術」は、彼自身の経験から引き出された実践的な教訓です。けっして机上の空論ではありません。 

また、自分の経験だけでは説得力がないと見たとき、ベーコンは歴史上の事例を持ち出しています。こういう姿勢は、ぜひ見習いたいものですね。みなさんにとって、ベーコンの言葉がその役割を果たしてくれるとうれしいです。 

限られた事例ですが、わたしが見た限り、リアル書店では「哲学書」のコーナーで平積みになっているようですが、できれば「自己啓発書」のコーナーに置いてほしいなと、ひそかに期待しております。 (以上)




<関連サイト>


フランシス・ベーコンが語る、5つの“仕事の極意”とは(印南敦史、ライフハッカー、2021年10月29日)


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