急に予定が空いたので、映画『ハウス・オブ・グッチ』(House of GUCCI)を見てきた。2021年製作の米国映画。リドリー・スコット監督の作品。
イタリアはミラノ発のファッション・ブランドのグッチ一族のファミリービジネスが、グローバルビジネス化するなか、異分子の侵入と資本の論理によってファミリー支配が終焉していく、1978年に始まる20年弱の愛憎劇。
さすが巨匠リドリー・スコット監督の作品だけに、濃度の濃い愛憎劇と犯罪ものに仕立て上げられて大いに満足。158分が短く感じられた。昨年2021年に日本公開された『最後の決闘裁判』とあわせて、おなじ年に大作を2つも完成させる力量とエネルギーには脱帽だ。
それにしても、主演のレディー・ガガの演技は見応えがある。グッチ家の御曹司を落として結婚に持ち込んだ女性、パワフルで上昇志向が強く、自分の欲望に忠実なアクの強い女性になりきって演じきっているからだ。イタリア系米国人のレディー・ガガのはまり役だろう。まんまイタリアのオバチャンそのもの。イタリアのオバチャンは、ほんま大阪のオバチャンそっくりやなあ、と(笑)
セリフはすべて英語だが、発音はイタリア風アクセントでイタリアっぽさを演出。使用されているBGMの大半は、ヴェルディの『リゴレット』などイタリアオペラの名曲を使用。ファミリーをめぐる悲喜劇。そして悲劇的な結末。
ただし、映画の内容は事実そのものではないようだ。映画の冒頭に inspired by the true story. と銘記してある。御曹司マウリツィオの妻であった当の本人のパトリツィアが、映画での描かれ方に、異議を申し立てているからだろう。この点は原作で確認してみたいところだ。
職人の国イタリアの中小企業は、ファミリービジネスの成功例として日本でも大いに注目されていたことがあった。だが、その後、グローバル経済化で資本の論理に敗北していったケースが少なくない。グッチもまたそうだ。いまやグッチにはグッチ家の関係者は誰もいない。
映画の最初で、いきなり御曹司の伯父さんを演じたアル・パチーノの日本語のセリフがでてくるのも驚きだ。1978年当時はバブル前夜。日本人がブランド品のお得意様だった時代でもある。まさに隔世の感でありますなあ・・。
この映画は、エンタテインメント作品として楽しむのはもちろん、ファミリービジネスのあり方を考えるケーススタディとして見る。世襲という事業承継と株式による支配という、そのものずばりのテーマに注目する必要があるからだ。そんな見方があってもいいだろう。
PS マウリツィオ・グッチが事業継承した1978年のイタリア社会
極左集団の「赤い旅団」による「モロ元首相誘拐事件」は、1978年のイタリアを震撼させた事件。また、1969年には極右による「フォンターナ広場爆弾事件」という大規模テロも発生している。イタリアの1970年代は「鉛の時代」と呼ばれている。きらびやかなブランド・ビジネスの世界と極左テロが同時に存在した1970年代イタリア。ちなみに、新旧世代間格差を描いたルキノ・ヴィスコンティの『家族の肖像』は、1974年の製作・公開である。
・・1978年の「モーロ元首相誘拐事件」をテーマにしたマルコ・ベロッキオ監督による『夜よ、こんにちは』(Buongiorno notte、2003年)についても言及。日独伊で極左テロが吹き荒れたが、イタリアだけが極左テロの終焉が長引いた
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・・合気道の合気会本部もまた男子直系相続で現在3代目
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(2022年1月29日 情報追加)
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