映画『英雄の条件』(2000年、米国)をようやく amazon prime video で視聴。重要なテーマを扱った127分。
英語の原題は Rules of Engagement(=交戦規定)。リーガルドラマであり、具体的には米海兵隊の「軍法会議」ものである。 海兵隊と海軍がらみの『ア・フュー・グッドメン』(1992年)のカテゴリーの映画といっていいだろう。
中東イエメン米国大使救出作戦にかんして、大使館を包囲するデモ隊の一般市民に対して発砲命令を出し、83人を殺害したという嫌疑をかけられ、軍法会議にかけられた海兵隊大佐の主人公。
反米デモが活発な中東での「一般市民虐殺」は、国益を損なうと考え保身に走る国務次官は、海兵隊を悪者に仕立て上げるプロットを画策する。軍の上層部もかばいきれず、軍法会議の開催を受諾せざるを得なくなる。軍人も組織人である以上、仕方ないのである。
軍法会議は、裁判官も検察官も現役の海兵隊の法務将校。弁護人は被告が選ぶことができるが、被告の大佐はあえてベトナム戦争時代の戦友で、退役間近の法務官を弁護士として依頼。 検察官は軍からロースクールに派遣された野心家、弁護人はベトナムでの重傷後にロースクールで学んで法務将校となっている。
しかも、軍法会議であっても陪審制である。ただし、陪審員が現役の海兵隊将校たちであることは、軍法会議ならではといえよう。
軍法会議で問われたのは、「交戦規定」を遵守して発砲したかどうかについてだ。一般市民が含まれる場合、あらかじめ警告を行ったかどうか、先方が撃ってきてから抗戦したかどいか、という規定である。もちろん、実際の戦闘行為において「交戦規定」が遵守されたかどうかは、きわめて微妙なものがある。
あくまでも理詰めの法廷技術で迫る検察官、情理あわせて陪審員を説得しようとする弁護士。この両者の息詰まるリーガルバトルが見所だ。判決を下すのは陪審員の心証に大きく依存する。この機会に綱紀粛正を図るか、それとも軍人としての名誉を守るか。
判決の内容については、ネタバレになるのでここには書かないが、陪審制ならではの判決といえるかもしれない。
対テロ作戦においては、軍人と非軍人の一般市民を区別するのは現実的にはきわめて難しい。そんな時代ならではの、むずかしいテーマを扱った映画なのである。 エンタメとしての完成度よりも、テーマそのものについて考えるための映画なのである。
軍人には軍人として、安心してその職務に専念してもらいたい。そう思うなら、一般市民であっても見るべき内容の映画だ。
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