『全裸監督 村西とおる伝』(新潮文庫、2021)を読んだあとは、つづけて『新・AV時代 全裸監督後の世界』(文春文庫、2021)を読む。ともに著者は、本橋信宏氏。
1980年代はレンタルビデオの全盛期だったが、1990年代はセルビデオがビジネスモデルとして成立し、高橋がなり氏の SOD(ソフト・オン・デマンド)が全面開花した時代だ。
この本は、AVの世界を牽引してきた人物列伝といった趣だが、なぜか第2章にはテリー伊藤が登場する。テリー氏の初の著書『お笑い北朝鮮』の取材旅行に同行した話が書かれていて、これがまた興味深い。
テリー伊藤を登場させたことで、その下でADとして働いていた高橋がなりがテレビの世界の出身者であることの意味がわかってくる。
一発勝負のビデオの世界と、企画力と事前のリハーサルが当たり前のテレビの世界の違い。そのビデオに世界にテレビの方法論を持ち込んだがゆえの成功と失敗。高橋がなり氏も出演していたTV番組「マネーの虎」の話もでてくるので懐かしい。
テリー伊藤や高橋がなりといった人たちだけでない。それ以外の訳ありの人物たちも大いに読ませるものがある。
それにしても、本橋信宏氏の筆力には読まされる。まさにプロの作家であると感心。 みずからが取材の現場に立ち会い、みずからも体験している世界。その世界の人でありながら映像系の人ではなく、あくまでも文筆の世界の人。その距離感もまた読ませる理由の一つなのだろう。
知る人ぞ知る世界の話だが、1980年代後半のバブル時代との違いは明らかだ。そういう時代だったのだな、とあとから振り返ることになる。それは読者にとっても、著者にとっても同様である。
もはやビデオの時代でもDVDの時代でもない。媒体としてのメディアは変化し、インターネット時代にはAVの世界も変化していく。
そう考えると、衛星放送に賭けて大失敗した村西とおる氏が、いかに時代の先をいっていたかが納得されるのである。ビジネスにおいては、先見性がありすぎるのも問題ということか。
目 次はじめにプロローグ第1章 村西とおる第2章 テリー伊藤第3章 岩尾悟志第4章 日比野正明第5章 代々木忠第6章 佐藤太治第7章 高橋がなり第8章 全裸シリーズ第9章 彼らの奇跡エピローグ十一年後のあれから。
著者プロフィール本橋信宏(もとはし・のぶひろ)1956年埼玉県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。政治、思想、事件、風俗などをテーマに、ルポルタージュ、小説と幅広く執筆。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)
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