2022年12月30日金曜日

書評『高峰譲吉文集 いかにして発明国民になるべきか』(鈴木淳編、岩波文庫、2022)ー「発明国民」こそ日本が生き残るためのカギだ!

 

おお、「発明国民」! すごいコンセプトだな。ものすごくインパクトがあるな! 

エジソンがでてくる前は、米国ではなんとベンジャミン・フランクリンが「発明王」とされていたらしいが、そのエジソン(1847~1931)と同時代の米国に生きた日本人が高峰譲吉(1854~1922)だ。 

エジソンは電気の分野での発明家であったが、高峰譲吉は化学の分野での発明家であった。しかも、発明を事業化し、特許収入によって富を築いたベンチャー起業家でもあったことも共通している。世俗的な成功という観点からいったら、高峰譲吉のほうが上かもしれない。 

高峰譲吉は、米国人と結婚し、米国を拠点に活動を行った人物だが、現在でも胃腸薬に使用されている「タカジアスターゼ」を発明し、副腎から「アドレナリン」の結晶化を世界ではじめて行った科学者でもある。まさに、世界的な発明家で科学者である。 


(第一三共胃腸薬に使用されている「タカヂアスターゼ」)


この文庫本は200ページ弱の本だが、この本には高峰譲吉の肉声が詰まっている。日本に帰国した際の講演や、雑誌に寄稿した文章で構成されている。 

なんといっても、発明と発見に至る苦心談に読ませるものがある。それはもう、まさに苦難につぐ苦難の連続としかいいようのない状況のなかでブレイクスルーが実現したのである。 ギリギリまで追い込まれて、本来の意図とは別のところで実現した発明、そして発見に至る先陣争いなどなど。 


(「窒素リン酸カリ」 東京都江東区の釜屋堀公園の「人造肥料工業発祥の地」の石碑の一部 筆者撮影)


幕末に生まれ、科学教育を受けた第一世代であった高峰譲吉。

英国に留学して化学の専門教育を受けたかれは、技術官僚を経て独立渋沢栄一の賛同を得て人造肥料製造会社を設立、その後は米国を拠点に研究活動に従事し、民間外交官として日米親善に尽くした。 

そんな高峰譲吉のことばは、現代でも大いに響くものがある。 


「私は人のやってないことをやりたい性分で・・」
「いかなる発明も実地に応用するあたわずんば、もって真価を発揮するに足らず・・」
「日本人は模倣国民と称せられているが、模倣に巧みなることは発明の前兆である。従来、米国はすべて欧州の真似をしていたのである・・」 


まさに独創的研究と発明がなにによってもたらされるか、語ってやまないではないか。

日本では、どうしても野口英世ばかりに脚光があたりがちだが、高峰譲吉こそ評価されてしかるべき人物であろう。 

個人的には「演説 天然瓦斯」(1889年)に注目したい。化学者の立場からクリーンエネルギーとしての天然ガスについて語った講演録である。高峰譲吉は、時代に大きく先駆けていいたのであった。


 
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・・地震後に火災で大量に死者が発生したのは、地震による液状化現象と「南関東ガス田」から漏れ出したガスが原因だという仮説がある。南関東ガス田のガス埋蔵量は800年分。いまなおメタン菌によってメタンガスが生成されているという


なお、大多喜天然ガス株式会社ある千葉県は、世界的なヨウ素生産地である。地下水のなかには天然ガスだけでなくヨウ素も大量に含まれているのである。日本には世界全体の埋蔵量の3分の2がある!


(2023年8月30日 項目新設)



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