『僕とジャニーズ』(本橋信宏、イーストプレス、2023)という本が8月に出版されていることを知って、さっそく取り寄せて読んでみた。フォーリーブスをリアルタイムで知っている世代として読まないわけにはいかないと思ったからだ。
元フォーリーブスの北公次氏から「魂の告白」を引き出したのが、本書の著者の本橋信宏氏であり、その内幕を回想録として記したのが本書である。
1988年に出版され、累計35万部売れたという『光GNEJIへ ー 元フォーリーブス北公次の禁断の半生記』(データハウス)。ジャニーズの「性加害」問題を告発した原点となったのがこの本である。北公次氏へのインタビューをもとに構成から執筆まで「ゴーストライター」として行ったのである。
北公次氏がすでに2012年に63歳で亡くなっていること、「魂の告白」を行いながらもマスコミから黙殺されつづけ、ようやく35年後の2023年になって「性加害」問題がクローズアップされるようになったことなど、さまざまな想いのもとに事実を公表するに至ったのだろう。
本橋氏が北公次による告発本を書いたのは32歳のときであり、北公次は39歳のときであった。
北公次の人生はじつにすさまじい。貧困から脱却を夢見て芸能界へ。偶然に偶然が重なってのジャニー喜多川氏との出会い。芸能界デビューとフォーリーブス時代の「栄光の10年間」、そして「どん底の10年間」。まさにジェットコースター人生である。
すでに35年もたっているとはいえ、ジャニー喜多川氏と北公次氏の4年半におよぶ「関係」は、あらためて取り上げるべき意味がある。なぜなら貧困からの脱却のため、崖っぷちに立っていた北公次にとっては、「それ」を受け入れるしかなかったからだ。その事実はきわめて重い。
いままで知らなかったが、北公次という芸名の「北」は、なんと「喜多川」からとったらしいのだ。それほどの関係性だったわけである。
芸能界デビューを志していた少年たちもまた、貧困層の出身であるかどうかは別にして、芸能界で生きていけるかどうかは、すべてジャニー喜多川氏の寵愛を受けるどうかにかかっていた。その点にかんしては、置かれていた状況は共通している。
本橋信宏氏は『全裸監督 村西とおる伝』の著者でもある。つまり、本橋氏は村西とおる氏の関係者であり、北公次の告白もまた村西とおる氏によるアダルトビデオ撮影中から始まったのである。この経緯がまた大いに読ませるのだ。
ジャニーズはまさに「戦後日本」の産物であり、戦後の日本社会と日本人は、ジャニーズとは切っても切れない関係にある。その意味でも、ジャニーズの闇を暴いた本書は、歴史の証言として残す価値があるのだ。
さすがに書き慣れたライターであるので、最初から最後までサラッと読めてしまう読み物に仕上がっている。だが、内容はそれ反して、じつに重い。
「戦後日本」が終わりつつあるいま、過去を振り返ることはたんなる回顧ではない。「現在」の、そして「これから」の日本社会ために不可欠なことなのである。
目 次序章 覆面作家の告白第1章 発火点第2章 ジャニーズ事務所マル秘情報探偵局第3章 北公次を探して第4章 告白第5章 ある行為第6章 合宿所、夜ごとの出来事第7章 急げ!若者第8章 懲役10か月・執行猶予3年第9章 41歳のバク転終章 35年目の決着最後に
著者プロフィール本橋信宏(もとはし・のぶひろ)1956年埼玉県所沢市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。集合写真で「一人おいて」と、置かれてしまった人物、忘れ去られた英雄を追いつづける。執筆内容はノンフィクション・小説・エッセイ・評論。著書『全裸監督村西とおる伝』(新潮文庫/太田出版)が原作となり、山田孝之主演で Netflix から世界190か国に配信され、世界的大ヒットとなる。1988年、35万部のベストセラーとなった北公次著『光GENJIへ』(データハウス)の構成を担当し、同名の映像作品も監督した。また2023年公開されたBBCドキュメンタリー「J-POPの捕食者 ― 秘められたスキャンダル」にも取材協力した。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)
<関連サイト>
・・故・北公次氏が告発しているビデオの一部と、本橋信宏氏が出演
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