2025年4月6日日曜日

書評『本を書く技術 ー 取材・構成・表現』(石井光太、文藝春秋、2024)ー たとえ本を書くつもりがなくても、たとえノンフィクション作品好きではなくても、読めば大いに得るものがある本

 

先週のことだが、タイトルに惹かれて『本を書く技術 取材・構成・表現』(石井光太、文藝春秋、2024)という本を読んだ。  

本来なら「ノンフィクションを書く技術」としたほうがより正確だろうが、「本を書く技術」という一般的なタイトルになった意味は読んでいるとわかってくる。それは単に営業上のものとは言い切れない。 

石井光太氏は、フリーの立場にあってノンフィクション分野でキャリア20年、すでに70冊も出しているという。わたしはそのうち初期の数冊しか読んでいないが、最底辺にまでおりていって取材対象と密着し、話を聞き出して読める作品をつくりだす能力には感嘆するばかりだ。 

そんな石井氏の「ノウハウ本」だから、面白くないハズがない。これからノンフィクション作品を書こうと思っている人、すでに着手している人は、読んだら大いに益のあることだろう。 

本書は、石井氏がカルチャーセンターで行ってきた講座をもとに書き下ろしたということで、なによりも内容が具体的なのがよい。取材のあり方についてはもとより、構成と表現にかんしては本書じたいがその見本になっている。 

しかも、具体的なノンフィクション作品が縦横に言及され、引用されているので、ノンフィクション作品を書こうと思ってなくても、ノンフィクション好きであれば大いに楽しめるだろう。うん、あの本は読んだな、この本まだだな、そんな本もあったのか、と。 

だが、本書は単なる「ノウハウ本」ではない人から話を聞き出すことの意味、そしてそれを文字をつうじて伝えるということの意味を考えさせる本になっている。 

その意味では、ノンフィクションを含めた文芸書の書き方を超えた、コミュニケーションの本質に迫った内容であり、これじたいがひとつのノンフィクション作品というべきなのかもしれない。 

なるほど、認知心理学者でベストセラー作家の今井むつみ氏が帯の紹介文で書いているように、「AI時代に<人間の本質>に迫る極意を伝える」ものになっている。読んでいて、その意味を大いに納得することになった。 

「AI時代」には、人間にしかできないことが意味をもつのであり、そのための考え方や手法は大いに説得力があるのだ、と。 

だからこそ、タイトルに惹かれて読む人だけでなく、ノンフィクション作品好きな人だけでなく、伝え方について悩んでいる人、さらに向上したいと考えている人も読む価値がある本になっているのである。 


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目 次
はじめに 
第1章 テーマの "空白地帯" を見つける ― 多彩な世界をどう切り取るか? 
第2章 「取材力」を身につける ―  心の言葉を引き出す関係構築術 
第3章 個の「ストーリー」を共有する ― 自分自身の常識を覆そう 
第4章 "脳を活性化" するノート術 ― 何をどう記録するか 
第5章 「構成力」で本は決まる ― 型の力を借りよう 
第6章 「見上げて」「驚く」ライティング術 ― 書き手の視座で表現は激変する 
第7章 五感描写、キャラクター造形法 ― 作品に命を吹き込む文章表現 
第8章 作品の社会性を掘り下げる ― 圧倒的なカタルシスを生む 
あとがき 
参考文献
  
著者プロフィール
石井光太(いしい・こうた) 
1977年東京生まれ。作家。国内外の貧困、災害、事件などをテーマに取材・執筆活動をおこなう。2021年『こどもホスピスの奇跡 短い人生の「最期」をつくる』で新潮ドキュメント賞を受賞。



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