「さあ太陽を呼んでこい」という歌がある。「♪夜明けだ夜があけてゆく~」で始まる軽快なリズムに、自然界を歌い上げたダイナミックな歌詞。
はるか昔のことになるが、まだ東京都にいた頃の小学生時代、音楽の授業で合唱で歌わされたが、すごく気に入っていた曲だ。1970年前後、つまり約半世紀も前のことになる。
ふと思いついて、超ひさびさに聴いてみたいと思って、「♪あかつきの空 あけの空~」という歌詞から検索してみたら、YouTube にアップされていた。
タイトルが『さあ太陽を呼んでこい』であること、1963年(昭和38年)の「NHKみんなのうた」であること、そして作曲が山本直純で、しかも作詞が石原慎太郎だったことを知った。
「♪あかつきの空 あけの空~」で転調する曲と、その歌詞に魅了されていたわけだが、詞を書いたのが若き日の石原慎太郎だったとは! はじめてその事実を知って、たいへん驚いている。
山本直純はTV番組の「オーケストラがやって来た」で有名な、黒めがねにヒゲの作曲家であることは、わたしの同世代の人なら知っているはずだ。「♪大きいことはいいことだ~」という森永チョコレートのCMソングも有名。この曲をつくったとき、作曲家は22歳!
石原慎太郎が『太陽の季節』で芥川賞を受賞したのは1956年(昭和31年)、「さあ太陽を呼んでこい」の歌詞が書かれた当時、慎太郎が28歳! いまだ政治家になる前のこと。さすがヨット乗りの海の男ならではの内容だ。おそらく、海上で夜明けを迎えた光景なのだろうと想像してみる。
夜明けだ夜があけてゆくどこかでだれかが口笛をきもちよさそに吹いている最後の星が流れてるあかつきの空 あけの空もうじき若い日がのぼる(・・・後略・・・)
1963年(昭和39年)は「東京オリムピック」が開催された年の前年だ。そんな時代背景もあったのかもしれない。「高度成長期」の日本は、まさに「太陽を呼んでこい」にふさわしい。
わたしの世代は、まったく知らず知らずに石原慎太郎の影響を受けて育ったていたことになるわけだな。反時代的な『スパルタ教育』(カッパホームズ)がベストセラーになったのは、1969年のこと。それ以前に、すでに無意識レベルで慎太郎の影響を受けていたわけだ。
本人も『回想録』では触れていないのは、作詞などあくまでも「余技」という位置づけであったのか、それとも忘れていただけの話なのか。
石原慎太郎の知遇を得ていた文芸評論家の福田和也は、1962年生まれのわたしとは2歳違いの1960年生まれでほぼ同世代だが、『石原慎太郎の季節』(飛鳥新社、2001)では『スパルタ教育』には言及していても、「太陽を呼んでこい」には触れられていない。
「NHKみんなのうた」で放送された「太陽を呼んでこい」は、若き日の倍賞千恵子によってカバーされている。バックコーラスは、ダークダックス。
倍賞千恵子というと、どうしても『寅さん』シリーズのヒロインさくらを想起してしまうが、「高度成長時代」の若き日本の担い手の一人でもあったのだな、と。
では、もう一度、「さあ太陽を呼んでこい」を聴いてみよう。 オリジナルの「東京放送児童合唱団」バージョンで。
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