先週のことだが、国会議事堂は外から見たことは何度かあっても、なかを見学したことがなかったなと気がついた。
そうだな、どうせ行くなら5月3日の「憲法記念日」がいい。でも憲法記念日は国民の祝日だ。祝日にも参観できるのかな?
ネットで検索してみたら、「国会参観(衆議院)の手続き」というのがあった。衆議院のサイトのなかにある。「無料のツアー」に参加すれば衆議院は内部を参観できるようだ。なんと土日祝日もOKだ。
以下、必要な箇所だけピックアップして記しておこう。
国会参観について参観は、平日のほか、土曜、日曜及び祝日も行っています。参観を希望される方は、参観受付窓口にお越しください。 衆議院では国会参観の出発地点として「衆議院ビジターセンター」で皆さまをお迎えしております。ここでは、皆さまにとって国会がより身近な存在となるよう、パネル、映像等を通じて国会の紹介に努めております。国会参観に先立ち、こちらをご覧ください。 午前の参観は大変混雑いたします(学校の夏休み、冬休み、春休み以外の時期)。混雑する時期や時間帯では待ち時間が長くなるうえ、院内では「着席や立ち止まっての説明がない参観」となる場合があります。午後の参観についてご検討いただきますよう、お願いいたします。(1)参観時間平日(衆議院参観通用門内参観受付所) 8:00 ~ 17:00(16:00 までに受付を終了してください) 土日、祝日(衆議院面会受付所参観受付窓口) 9:30、10:30、11:30、 13:00、14:00、15:00 の計6回です (以下略)
■「大人の社会科見学」としての「国会参観ツアー」
ということで、2025年の「憲法記念日」(5月3日)の14時からのツアーに参加することにした。「大人の社会科見学」である。
ほんとうは13:00のツアーに参加する予定だったのだが、美術展「メキシコへのまなざし ー 戦後日本とメキシコの美術交流」(埼玉県立近代美術館)に行ってきたため遅れてしまったのだった。
東京メトロ千代田線の国会議事堂前駅で下車。この駅は乗り換えで何度も下車しているが、地上に出るのは数回しかないような気がする。地上に出たら国会議事堂はすぐにわかる。
まずは、受付で「参観申込書」に必要事項を記入して提出すると、『国会 衆議院へようこそ』という色刷りのパンフレット(小冊子)を渡される。このパンフレットが入館証の代わりとなる。
14時まで待合室で待機。トイレは事前に済ませておくように言われる。代表者の名前が呼ばれると列に並ぶ。注意事項の説明のあと、係官によるボディチェックとバッグを開けての持ち物検査。それほど厳戒態勢が敷かれているわけではなかった。
(中庭にある噴水)
2列にならんで誘導されて中庭へ。そのあと衆議院の建物になかに入る。ひたすら階段を3階まであがるので、事前に覚悟しておいたほうがいい。
(階段の踊り場から窓越しに見た議事堂中央の建築物)
■衆議院の本会議場には独特の匂いが充満している
衆議院の本会議場の見学は、傍聴席に座って行う。せっかくなのでかぶりつきの席に座った。ただし、その前にマイクの置かれたメディア関係者用の席が一列ある。
隣にいた中国人と思しきグループのマナーがなっておらず、後ろの席の人たちの邪魔になっているので口頭で厳しく注意しておいた。日本人はルールにうるさいのだと、わからせておかなくてはいけない。そうでないと舐められることになる。
さて、衆議院の議場(本会議場)そのものは、TVのニュースや国会中継などで目にすることも多いので、とくこれといった感慨もない。
ただ一点だけ、これだけは現地に足を運んで体感しなくてはわからないことがある。 それは、臭いだ。独特な臭いが充満しているのだ。
むうっとするような、重たいというか、古い建築物ならではの独特の匂いというか・・・ことばではうまく説明できないのが、もどかしい。
係官の説明によれば、最新の空調設備は設置されているようだが、長年にわたって染みついた匂いが消え去ることはないのだろう。
建築物としての国会議事堂は、1920年(大正9年)に着工がはじまってから、1923年の関東大震災を経て1936年(昭和11年)に完成している。延べ254万人が建設作業にあたり、国内産の材料で調達した総大理石の堅牢な構造物で、内装は木造である。
なんといっても「二二六事件」のあった1936年の11月から「帝国議会」として使用が開始されて以来、現在にいたるまで約90年間にわたって使用されきたのである。
2009年に外装だけでなく、内装にかんしても修繕作業がおこなわれているとはいえ、そのほとんどが男性で占められてきた衆議院議員たちの体臭(!)も染みついているのだろう。加齢臭やポマード(むかしのオッサンたちの!)、さらにはタバコの臭いが複合して・・・
強烈な臭いといえば、バンコクのドンムアン空港や韓国のソウル空港のがそうだが、映像や画像からはけっしてわからないのが臭いである。実際にその場にいって、五感のうちで触覚や嗅覚も全開する必要がある。そうつよく感じたのであった。
■ツアーは全体で1時間
ツアーは無料だが、係員の指示にしたがわなくてはならない。ただし、拡声器が使用されていないので、列の後方にいると声が聞き取れない。写真撮影タイムは設定されているので問題はない。
本会議場をあとにすると、天皇陛下の「御休所」をガラス戸越しに見学。
その反対側にある、ルネサンス建築の回廊のような吹き抜けの空間を見学。
回廊の右側を歩いて行き、「中央広間」を3階から見学。伊藤博文の立像が小さく見える。
なんといっても、東洋初の憲法である「大日本帝国憲法」の制定に命をかけたのが伊藤博文である。 憲政(=立憲政治)の基礎を築き、近代国家としての方向性をつけた伊藤博文は、この点においてだけでも、日本近代史におけるきわめて重要な人物として記念されなくてはならない。
国会議事堂内には、このほか板垣退助と大隈重信、そして尾崎行雄の立像があるようだが、伊藤博文以外は「国会参観ツアー」では見学することはできなかった。
内部の参観はこれで終わり。外にでると国会議事堂の全景が見える。ここで撮影タイムとなる。
以上で、「国会参観」の無料ツアーは終わり解散となる。
■憲政記念館へ
国会議事堂から歩いて10分以内に「憲政記念館」がある。正式には「衆議院憲政記念館」というらしい。ここは、「憲政の父」である尾崎行雄を記念した建築物だ。尾崎行雄は、咢堂の号で知られている。
(尾崎行雄と記念撮影するのを忘れていた・・)
憲政記念館は入口から建物までの距離が長い。大きな駐車スペースとなっているからだ。 憲法記念日の祝日も、黄色いはとバスが何台も停車していた。きっと「お上りさん」(失礼!)の団体ツアーなのだろう。「おらが国さの先生が・・」というやつか(笑)
憲政記念館の内部は、日本の憲政の歩みがパネル展示され、ミニ議会、その他の展示物がある。 「立憲政治」の確立(1989年)と「普通選挙」(1925年)の実現が、憲政150年の歴史の主要トピックである。
窓口で参観の旨を話したとき、記念に絵はがきを差し上げることになっているのだが、5枚のなかから1枚選んでくださいといわれた。
ためらうことなく、「憲法記念日」だからこれを選びますといって、明治天皇による「憲法発布式之図」の絵はがきをいただいた。
いまこれを書いていて気がついたが、大日本帝国憲法が発布された2月11日は、戦前は「紀元節」とされていた祝日であり、戦後は「建国記念日」となっている日だな、と。
そうか、その日を選んで大日本帝国憲法は発布されたのか! 「建国記念日」ではなく、「大日本帝国憲法発布の日」としてもよかったわけだ。
とはいうものの、あえて5月3日の「憲法記念日」におこなった今回の「大人の社会科見学」としての「国会議事堂参観」である。いや、いろいろな気づきがもたらされたのも、動いたからである。この日に訪問した甲斐はあったのだ。
今後あえて訪問しようとする人がいたら、あえて2月11日の「建国記念日」=「大日本帝国憲法発布の日」に行ってみるのもいいかもしれない。今後は現行の「日本国憲法」が改正されることがあろうとも、日本の憲政の原点は「大日本帝国憲法」にある。
(画像をクリック!)
<ブログ内関連記事>
・・これまた国会議事堂とならぶ建築物
・・「大日本帝国憲法」と「日本国憲法」の複製が展示
(2023年11月25日発売の拙著です 画像をクリック!)
(2022年12月23日発売の拙著です 画像をクリック!)
(2022年6月24日発売の拙著です 画像をクリック!)
(2021年11月19日発売の拙著です 画像をクリック!)
(2021年10月22日発売の拙著です 画像をクリック!)
(2020年12月18日発売の拙著です 画像をクリック!)
(2012年7月3日発売の拙著です 画像をクリック!)
end