2025年5月4日日曜日

美術展「メキシコへのまなざし ー 戦後日本とメキシコの美術交流」(埼玉県立近代美術館)に行ってきた(2025年5月3日)ー 1950年代の日本にはメキシコ美術に魅了された画家たちがいた

 


埼玉県立近代美術館に行くのは今回がはじめて。JR北浦和駅から徒歩で行ける公園内にある。北浦和に行くのも今回がはじめて。京浜東北線は南浦和止まりが多いので、大宮行きに乗り換えるハメになった。 

わたしもメキシコ(・・いや、ほんとうはスペイン語でメヒコといっておきたい!)が好きで、四半世紀も前のことだが1ヶ月かけて全土を回ったことがある。米国西海岸のサンディエゴに隣接したティファナから、東端で国境を接するグアテマラにも近い、サン・クリストーバル・デ・ラス・カサスまで行っている。 

マヤ遺跡やメルカード(市場)、色鮮やかな民芸品、そしてメキシコシティの市庁舎などに描かれた壁画の数々・・・。 

「太陽の国メキシコ」は、人を魅了させるものがある。先住民であるインディオと植民者であるスペインの文化が混合してできあがった独特の世界。 

そんなメキシコだが、「1950年代の日本では、メキシコ美術が展覧会や雑誌を通じて盛んに紹介され、多くの美術家がその鮮やかな色彩、古代文明や革命の歴史と結びついた力強い造形表現に魅了されました」と、美術展の紹介にある。 

「とりわけ、1955年に東京国立博物館で開催された「メキシコ美術展」は、美術家たちがメキシコに目を向けるきっかけと」なったそうだ。

メキシコ美術の大きな影響を受けた日本人画家のうち、数人の作品が回顧的に取り上げられたのが今回の美術展だ。メキシコの画家たちと、インスパイアされた日本人画家たちの作品が展示されている。 


(パンフレットより)


個人的な趣味としては、岡本太郎と利根山光人のふたりが好きだ。 

岡本太郎については、いまさら言及するまでもあるまい。「大阪万博 EXPO'70」の太陽の塔もそうだし、メキシコの影響は、現在は渋谷駅のコンコースに展示されている壁画にあるとおりだ。 

利根山光人は、もっと知られていい存在だと思う。岡本太郎といえば太陽が連想されるが、利根山光人もまた「太陽の画家」であった。美術展の図録を除いたら、画集もないのが残念だが、今回の美術展のパンフレットの表紙にその作品が採用されている。 


(利根山光人《いしぶみ》1961年)



2020年代の日本では、けっして一般受けするテーマではないかもしれない。とはいえ、メキシコ好き、メキシコ美術好き、そして上記の日本人画家を含めた日本人画家たちの作品を見たい人は行く価値はある。 会期は5月11日まで。テキーラ! 



■メキシコを知るために絶対に見るべきドキュメンタリー映画

ところで、メキシコの画家による展示作品のなかに、エイゼンシュテインへの言及があった。

「メキシコ20世紀絵画展」(世田谷美術館)にいってみた(2009年8月18日)の末尾に以下のように書いたのは、すでに16年前のことになる。せっかくの機会なので、エイゼンシュテインと『メキシコ万歳』について紹介しておこう。


エイゼンシュテイン監督の『メキシコ万歳!』メキシコについては、ソ連の映画作家セルゲイ・エイゼンシュテイン監督による映画『メキシコ万歳!』(・・監督の死後に未完成フィルムを編集して1980年に初公開)など書きたいことはまだまだある。エイゼンシュテインがハリウッドからの招待を受けてメキシコで映画撮影をしたのが1930年、未完成のまま放置されていたフィルムだが、メキシコを描いた映画ではもっとも神話的なアプローチで、見る価値のある作品である。エイゼンシュテインまで書き始めると際限がなくなるので、今回はここらへんでやめておく。


セルゲイ・エイゼンシュテインは、ロシア革命のさきがけとなったオデッサでの反乱事件をとりあげたサイレント映画『戦艦ポチョムキン』で有名だ。ロシア史に題材をとった『アレクサンドル・ネフスキー』や、日本の歌舞伎の影響を大きく受けた『イワン雷帝』など、芸術性の高い名作をつくりだしたユダヤ系の映画監督である。

『メキシコ万歳』(¡Que Viva México! ケ・ビーバ・メヒコ)は、ハリウッド滞在中のエイゼンシュテインが1932年に制作したモノクロ映画で、1978年に再編集されて公開されている。日本での公開は1980年で、わたしはDVD版で視聴した。


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ソ連時代に制作されたドキュメンタリー映画であり、「モスフィルム(」Mosfilm)によって YouTube で英語字幕つきで全編が  Que Viva Mexico | FULL MOVIE | by Sergei Eisenstein として YouTube に公開されている。


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タイトルはスペイン語だが、ナレーションはロシア語。ロシア語を聴きながら英語字幕で確認し、メキシコを考えるというのも、なかなか乙なものである。

メキシコの歴史が、スペインによる植民地時代のフランシスコ会ミッションスペイン文化である闘牛、そして「メキシコ革命」。民衆世界であるメルカード(市場)、ガイコツダンス、サボテンとリュウゼツラン(テキーラの原料)などなど。

モノクロではあり、すでに90年近く前のメキシコであるが、現代と過去が交錯し、濃厚な原色のメキシコがフィルムに焼き付けられている。ぜひ視聴してほしい。



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<関連サイト>

特別展覧会 没後20年「利根山光人 VIVA MEXICO」展 -メキシコに魅せられた太陽の画家」(聖徳学園・聖徳博物館 20146年9月8日(月)~2014年12月20日(土))
・・知っていたら、訪れたもの利根山利根山千葉県松戸市


<ブログ内関連記事>

・・ロシアの革命家トロツキーとメキシコの関係、スターリン主義者によって暗殺されたその最期、フリーダ・カーロなどについて記しておいた。


・・メキシコ西部の町サン・クリストーバル・デ・ラス・カサスで行われた「受難劇」。1991年に同地を訪れた際に知り合った現地の人にいただいた写真をスキャンして掲載




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