2026年7月20日月曜日

夏はフンドシ。「日本人の魂」を取り戻せ!(2026年7月20日) ― 日本列島は「海洋民族」である!



暑い、いや熱い。関東地方南部もきょうから35℃以上の猛暑日がつづく予報がでている。そうか、本日は「海の日」だったな。 本日で梅雨明けだそうだ。どうりで暑いわけだ。

この暑くて熱い夏をどう過ごすか。ハイテクに頼る方法もあるだろうが、伝統的なローテクに頼るという方法もある。 

夏はフンドシ! 日本男子ならフンドシ! フンドシ一丁!

風通しがよいので涼しくて蒸れない。言うことなし。 十数年前に山伏修行塾に参加してフンドシを締めて以来、フンドシに目覚めたわたしは、夏はフンドシと決めている。フンドシを締める。だが、締め付けない。これが肝心。

『ふんどしニッポン―下着をめぐる魂の風俗史』(井上章一、朝日新書、2022)という面白い本がある。建築史から出発して、いまではすっかり風俗史の研究者になっている京都人の著者によるものだ。  




日本男子がフンドシを締めなくなったのは、戦後社会がアメリカナイズされてからのようだが、いまでは伝統的な夏祭くらいの際しかフンドシ姿の男たちを見ることはなくなった。 

ブリーフやトランクスが普及するそれ以前は、日本男子の下着はフンドシかサルマタだったのだ。

明治の男たちは、驚く勿れ、なんと背広のズボンの下はフンドシだったのだ。見た目は洋装、中身はフンドシ。これぞ和魂洋才!

そういえば、神戸生まれで神戸育ちの亡父の話だが、戦時中は瀬戸内海にもサメが増えており、遠泳の際にはフンドシを流して泳いだということだ。ほんとうに効果があるのかどうかは知らないが、海水パンツの普及以前はフンドシ姿で泳いでいたのである。

この本は知られざる話が満載で面白いのだが、わたし的には最終章の「20 海のむこうでは」がもっとも好奇心を刺激される。

東アジアでは「フンドシ文化」は日本列島に特有のもので、中国や朝鮮とはまったく違うという指摘がそれだ。*

イタリアの人類学者フォスコ・マライーニによる『海女の島<舳倉島>』(未来社、牧野文子訳、1964)という本には、裸にフンドシ姿の輪島の海女の写真が挿入されている。海に潜って海産物を獲る海女は、日本海側にも太平洋側にも存在しており、海女の起源は済州島(チェジュド)であるという説がある。済州島と半島の文化は異なると考えるべきかもしれない。



いまではかならずしもそうとは言えないが、基本的に日本人はハダカになることにあまり抵抗がないようだ。風呂屋やホテルの大浴場でスッポンポンになるのは当たり前。東南アジアのように暑い国でも、人前でハダカになるのが不作法とされることが多いのは、日本人的には不可解である。

フンドシは、現在でもミクロネシアなど「環太平洋」の原住民の文化である。フンドシは、黒潮の流れに沿って、台湾を経て日本列島に到ったというわけだ。 

ということはつまり、日本文化の基層は「海洋民族」であることを示している。南方系である。裸族である。入れ墨である。黒潮に沿って北上してきた文化が、日本全土に拡がったということになる。 

そういえば、司馬遼太郎も西郷隆盛にかんするエッセイのなかで「若衆組」のことを語っていたな。薩摩の郷中教育は若衆組の由来するものであり、薩摩や土佐、房総をふくめた「黒潮文化圏」についての話である。

となると、日本民俗学の創始者・柳田國男が『海上の道』で展開した仮説も、あながち間違いではないということになる。そういえば、その昔、角川春樹氏が実際に丸木船を繰り出して実験してみせた「野性号」というプロジェクトがあったな。

ヒトが移動すると文化もいっしょに移動するわけだが、文化の起源というものは、遺伝子レベルの起源論とはかならずしも一致しない。 弥生人は半島経由の大陸からの流入が圧倒的だが、日本人のルーツはそれだけではないのである。黒潮ルートもあるのだ。

フンドシが日本列島に拡がった歴史的経緯についても、ぜひ知りたいものだ。おそらく有史以前のことだろうから、物的証拠が残りにくいので難しいとは思うが・・・

綿(コットン)が普及する以前は、日本では麻が中心だったことを考えると、フンドシの素材も麻だったのだろうか? さらにそれ以前は・・・? 高校3年のときに読んだきりなので覚えてないが、柳田國男の『木綿以前の事』に書いてあったかな? 

いろいろと知りたいことが、つぎからつげへとでてくるが、なにはともあれ、夏はフンドシ。フンドシ締めて日本人の魂を取り戻せ! 


画像をクリック!



目 次
まえがき
1 女はあとまわし
2 男が洋服に着がえる時
3 たたかう洋服
4 およぐ時は、またべつで
5 ジェンダーギャップの別局面
6 ベルリンに褌はかがやいて
7 華族の下半身
8 女人退散のいでたちに
9 褌の黄昏
10 褌かサルマタか
11 河をこえて
12 アメリカの影
13 戦争美術の可能性
14 上着と下着
15 下着の転換期
16 見上げれば、屋根屋の褌
17 神事では
18 国粋か造反か
19 女にも褌を
20 海のむこうでは
あとがき

著者プロフィール
井上章一(いのうえ・しょういち)
1955年、京都府生まれ。国際日本文化研究センター(日文研)所長。京都大学工学部建築学科卒、同大学院修士課程修了。京都大学人文科学研究所助手をへて日文研教授。専門の建築史・意匠論のほか、日本文化について、あるいは美人論、関西文化論などひろい分野にわたる発言で知られる。


<関連記事>

・・「10万年前には一部がヨーロッパとアジアに移動を始め、人類は世界に拡散していく。かつて赤道直下のインドネシア、マレーシア一帯には「スンダランド」(Sundaland)と呼ばれる大陸があり、アジアに向かった新人の一部が定住したとみられる。氷河期で気温は今より5~7度も低く、草原と森が混在する平原に多くの動植物が生息する豊かな大陸だったという。
しかし、約2万年前に最後の氷河期が終わって気温が上昇し始めると、遠浅の大陸棚に囲まれたスンダランドは急速に水没し始める。陸地の面積が減り、温暖化によって食料となる動植物もとれなくなると、多くの人々は新天地を求め、船で太平洋にこぎ出した。・・」


(黒潮の流れに注目! 上掲記事より)


黒潮の流れが九州で分岐し、「対馬海流」として日本海側にも流れることも忘れるべきではない。対馬海流に乗ってきたマグロは、青森で漁獲される。



<ブログ内関連記事>

・・「ふんどしも初体験。私の年代の人間で日常的にふんどしを使用しているのはごく一部の人だけだろう。ふんどしの付け方もわからなかったがこれはいい経験になった。実際に着用してみると、話に聞いていたとおりで、すうすうして気持ちよい。恥ずかしいという気持ちは修行に入った瞬間から捨てることだ。水垢離(=みそぎ)や滝行では、男子はふんどし一丁で水に入ることになる(・・女子は水着着用)。なお、ふんどしは貰って帰ることができるので、今後は愛用したい!?」


・・冬には厳寒となる朝鮮半島は「家の作りやうは、冬をむね」としている。「朝鮮の役」の際に日本軍兵士が苦しんだのが凍傷であった

・・「最終章の「折口信夫における水への郷愁」で描かれたイメージが、非常に強く記憶に残っている。古代日本人が、海の彼方から漂う舟でやってきたという事実にまつわる集団記憶。著者の表現を借りれば、「波に揺られ、行方もさだまらない長い航海の旅の間に培われたであろう、日本人の不安のよるべない存在感覚」(P.212)。歴史以前の集団的無意識の領域にかつわるものであるといってよい。板戸一枚下は地獄、という存在不安。」


(2025年1月24日発売の拙著です 画像をクリック!

(2023年11月25日発売の拙著です 画像をクリック!

(2022年12月23日発売の拙著です 画像をクリック!

(2022年6月24日発売の拙著です 画像をクリック!

(2021年11月19日発売の拙著です 画像をクリック!

(2021年10月22日発売の拙著です 画像をクリック!

 (2020年12月18日発売の拙著です 画像をクリック!

(2020年5月28日発売の拙著です 画像をクリック!

(2019年4月27日発売の拙著です 画像をクリック!

(2017年5月19日発売の拙著です 画像をクリック!

(2012年7月3日発売の拙著です 画像をクリック!


 



ケン・マネジメントのウェブサイトは

ご意見・ご感想・ご質問は  ken@kensatoken.com   にどう
お手数ですが、クリック&ペーストでお願いします。

禁無断転載!







end