2026年10月12日月曜日

『ヒトと AI』(岡野原大輔、岩波新書、2026)を手引きにして「ヒトと AI が共存する時代にヒトに求められることはなにか」という問いをじっくりと考えてみる

 

『ヒトと AI』(岡野原大輔、岩波新書、2026)をじっくり読んでみた。ことし7月の新刊である。  

「ヒトと AI が共存する時代にヒトに求められることはなにか」という問いに対する見取り図を示した考察ノートである。 

著者の思考プロセスを順にたどっていくことで、おのずから見えてくるものがある。200ページ程度の本だが、飛ばし読みにしないほうがいい。 「詳細目次」をじっくり読んでみるとそれがわかるだろう。

全部で28章あるが、大きくわけて3部構成にになっている。


第Ⅰ部 ヒト以外の知能 
第Ⅱ部 ヒトの知能 ― AI との対比からみる特徴 
第Ⅲ部 ポストAIの社会 ― 制度・経済・責任 


第Ⅰ部と第Ⅱ部で、ヒトとAIの知能のあり方について考察したあと、ヒトとAIが共存する社会で、責任を引き受ける主体としてのヒトにとって求められることはなにかについて考察が行われる。 

著者は、過去の技術変化への社会の対応がそうであったように、ヒトは AI による変化をなんとか受けとめていくだろうと、楽観的な見方を示している。わたしも基本的に同感だ。最近やたら耳にする米国発の一神教的な「終末論」とは異なるスタンスである。 

重要なことは、AI にできることの限界を見極めたうえで、ヒトにしかできないこと、これからの時代にヒトに求められることをただしく認識し、ヒトとAIの共存時代に必要なマインドセットとスキルを磨いておくことだ。

結論が先にありきの本ではない。「学習」の意味をただしく理解し、自分がもっている「常識」という「固定観念」をリセットし、つねに自分の認識をアップデートしていくことが必要なことを、ていねいに教えてくれる好著である。 それこそが「学習」の本質なのだ。

著者は、「学習」を「経験や内省をつうじて、自己の内部状態が持続的に変化していく過程」と定義している。これはAIだけでなく、ヒトにとってもおなじである。ことばと概念の再構築も必要となってくる。

ヒトにとっての課題は多い。責任を引き受ける主体としてのヒトにとって大きな課題である。心して生きていかなくてはならないのである。


(画像をクリック!)



著者プロフィール
岡野原大輔(おかのはら・だいすけ) 
1982年生まれ。2010年に東京大学大学院情報理工学系研究科博士課程を修了(博士)。2006年にプリファード・インフラストラクチャー、2014年に最先端のAI開発で知られる株式会社Preferred Networks(PFN)を共同創業。現在はPFNの代表取締役最高研究責任者(CIO)を務める傍ら、複数の先進企業の代表を兼任。未踏創造事業スーパークリエータ選出など受賞歴あり。 


詳細目次
はじめに 
第Ⅰ部 ヒト以外の知能 
 第1章 学習する計算機 
  学習する計算機と、説明できなくなった人間
  理解する前に答えがある世界へ 
 第2章 学習とは何か
  模倣する学習から、試行錯誤する学習へ 
  なぜ人は「理解していないもの」に従うのか 
  わからないものに判断を委ねるとはどういうことか 
  理解を前提とした判断の限界 
  コラム 学習の三つの基本形 
 第3章 AIは断片的な世界で学習する 
  断片的な学習がもたらす強さ 
  連続性を持たない学習の限界 
  AIは表面的にしかわかっていない 
  世界の厚みを持った人の学習 
  コラム 大規模言語モデルの学習 
 第4章 AIは継続学習が苦手
  分散表現が生む「記憶の干渉」 
  破滅的忘却 
  AIは忘れながら覚え直している 
  反復によって成立する学習 
 第5章 なぜヒトは少ない経験から学べるのか 
  生存戦略としての「その場学習」 
  多次元的で高密度な学習 
  記憶の固定化と干渉の回避 
  抽象化という圧縮装置 
 第6章 抽象化の力と副作用 
  カテゴリ化 
  因果を見出したいという欲求 
  抽象化や因果推論が生む誤りと迷信 
  抽象化と偏見 
  人とAIの抽象化の違い 
  抽象化は知能の加速装置であり、不安定化要因でもある 
 第7章 究極の抽象化である言語 
  個人を超える学習
  曖昧さの強さ 
  離散化とコピー可能性 
  無限の表現力 
  AIが言語を扱うということ 
  さまざまな情報をつなぐハブとしての言語 
 第8章 AIは理解しているか 
  言語の理解と世界の理解 
  理解を構成する5つの観点 
  AIは5つの理解をすでに高い水準で実現している
  コラム 文脈内学習 
第Ⅱ部 ヒトの知能 ― AIとの対比からみる特徴
 第9章 個別性と多様性 ― 同じ世界でも、異なる世界にいる
  評価軸の違いからの個別性
  多様性は探索のための設計原理である
  AIとの対比―評価軸の固定という制約
 第10章 文化―個人を超えて学ぶ仕組み 
  文化がもたらす集団学習
  評価軸の外部化
  文化を持たないAIとの対比 
 第11章 死と有限性 ― 不可逆な有限性が知能を形づくる
  不可逆性が選択を生む 
  死と集団の学習 
  AIとの構造的な違い 
 第12章 感情 ― 学習を駆動する内的報酬
  感情の起源 ― 身体状態のモニタリングから社会的評価へ 
  感情は経験に重みを与える
  内的報酬としての感情
  感情と個別性 
  AIは感情を持ちうるか
 第13章 自由と責任 ― 選択を引き受ける主体
  主体なき選択は自由ではない 
  不可逆性としての自由と責任 
  AIはなぜ自由ではないのか 
  自由と責任の再定義 
 第14章 意識と自己 ―「私」はどこに宿るのか 
  自己モデル ― 行動を「自分のもの」にする短期記憶 
  目標 ― 行動に方向をあたえる軸 
  内省能力と主観経験 
  AIはどこまで主体か 
  社会的責任と責任の所在 
第Ⅲ部 ポストAIの社会 ― 制度・経済・責任
 第15章 責任は誰のものか 
 第16章 仕事の再設計 ― AIが業務に溶け込んでいく 
 第17章 ポストAI時代の業務 (1) ― 指揮と統合
 第18章 ポストAI時代の業務 (2) ― 監査・変更・停止 
 第19章 コミュニケーションの再設計 ― 交渉が並列化し、委譲が制度になる 
 第20章 言語の再発明 
 第21章 教育の更新
 第22章 研究開発の逆転
 第23章 神託としてのAIと科学研究
 第24章 エージェント社会とRTS 
 第25章 引き返せない選択としての創造性 
 第26章 なぜ外国語を学ぶのか 
 第27章 数十億の AI エージェントが経済活動を担うとき ― 主体・契約・市場の再編
 第28章 AIを社会に組み込むための設計原理 
おわりに ― AIと共に変わるヒト
参考図書
あとがき


<ブログ内関連記事>





(2025年1月24日発売の拙著です 画像をクリック!)

(2023年11月25日発売の拙著です 画像をクリック!)

(2022年12月23日発売の拙著です 画像をクリック!)

(2022年6月24日発売の拙著です 画像をクリック!)

(2021年11月19日発売の拙著です 画像をクリック!)

(2021年10月22日発売の拙著です 画像をクリック!)

 (2020年12月18日発売の拙著です 画像をクリック!)

(2020年5月28日発売の拙著です 画像をクリック!)

(2019年4月27日発売の拙著です 画像をクリック!)

(2017年5月19日発売の拙著です 画像をクリック!)

(2012年7月3日発売の拙著です 画像をクリック!)


 



ケン・マネジメントのウェブサイトは

ご意見・ご感想・ご質問は  ken@kensatoken.com   にどう
ぞ。
お手数ですが、クリック&ペーストでお願いします。

禁無断転載!







end