■岡本太郎の語る芸術論は、そのまま人生論となっている
「岡本太郎、ピカソを語る」という内容の本。
聞き手の文学者・宗 左近の存在はあくまでも黒衣(くろこ)で、岡本太郎が最初から最後まで一人で語り尽くす、といった勢いである。この情熱的な語り口が、岡本太郎ファンにはたまらない。
しかし結局のところ、岡本太郎はピカソを語ることで自分自身を語っているのである。なぜなら「それに強烈に感動したというのは、自己発見だからね」(p.105)。
これは岡本太郎が、戦後の日本で"発見"した縄文土器の美について語ったコトバだが、彼は若き日にパリでピカソの絵に出会ったとき、「アッ、これだ!と思った。身体中が熱くなって、その絵の前で心身が爆発するような思いだった」(p.16)と語っている。
この瞬間、岡本太郎は自己発見したのである。「自己を新しく確認した」のである。自分のなかにあるもの、自分が何をやらなければらないか、を確認したのであった。
岡本太郎は、現在では芸術家をこえた人間全体として再び若い人たちに受け入れられるようになっている。
人間の生き方について語られた数々のコトバは、死後もなお、われわれを叱咤し、また同時に鼓舞してやまない。そしてもちろん作品そのものも。
ピカソに即して語られたこの本を読むと、岡本太郎のコトバが、そのままビン、ビンと直接響いてくるのを感じ取ることができる。
岡本太郎の語る芸術論は、そのまま人生論となっている。
なぜなら、芸術とは才能の問題ではなく、全人間存在そのものにかかわるものだからなのだ。
■bk1書評「岡本太郎の語る芸術論は、そのまま人生論となっている」投稿掲載(2009年11月3日)
<岡本太郎に関するリンク集>
・岡本太郎記念館(東京・青山)・・岡本太郎アトリエの保存・再現
・川崎市岡本太郎美術館・・神奈川県川崎市にある本格的美術館
・太陽の塔(独立行政法人 日本万国博覧会記念機構)
岡本太郎については、あえて説明するまでもなかろう。
1970年の大阪万博で、リアルタイムで太陽の塔をみた少年としては、最近の岡本太郎人気の高まりは、まことににもってうれしいものがある。世代を超えた対話が可能となるためだ。
パリでは、マルセル・モースの下で民族学を勉強した岡本太郎は文筆家でもあった。紹介したい本は多数あるので、また項を改めて取り上げたいと思う。
PS 読みやすくするために改行を増やし、あらたに<ブログ内関連記事>を加えることにした。 (2014年2月5日)。
<ブログ内関連記事>
「岡本太郎のシャーマニズム」展にいってきた(2013年6月15日)-エリアーデの『シャーマニズム』が岡本太郎に与えた影響の大きさを知る企画展
「生誕100年 人間・岡本太郎 展・前期」(川崎市岡本太郎美術館) にいってきた (2011年6月)
「生誕100年 岡本太郎展」 最終日(2011年5月8日)に駆け込みでいってきた
書評 『日本人は爆発しなければならない-復刻増補 日本列島文化論-』(対話 岡本太郎・泉 靖一、ミュゼ、2000)
・・この本の表紙は「縄文人の彫刻」であある
書評 『ピカソ [ピカソ講義]』(岡本太郎/宗 左近、ちくま学芸文庫、2009 原著 1980)
本の紹介 『アトリエの巨匠に会いに行く-ダリ、ミロ、シャガール・・・』(南川三治郎、朝日新書、2009)
マンガ 『20世紀少年』(浦沢直樹、小学館、2000~2007) 全22巻を一気読み・・大阪万博の太陽の塔を見ることのできた少年たち、見ることのできなかった少年たち
「メキシコ20世紀絵画展」(世田谷美術館)にいってみた
・・パブリック・アートとしてのメキシコの「壁画運動」。岡本太郎もその影響を大きく受けており実作もしている。メキシコで発見され里帰りした壁画は、2008年以降は渋谷駅に展示され、有るべき姿でよみがえった
(2012年7月3日発売の拙著です)
ツイート
ケン・マネジメントのウェブサイトは
http://kensatoken.com です。
ご意見・ご感想・ご質問は ken@kensatoken.com にどうぞ。
お手数ですが、クリック&ペーストでお願いします。
禁無断転載!
end