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2010年11月28日日曜日

マンガ『20世紀少年』(浦沢直樹、小学館、2000~2007) 全22巻を一気読み




一昼夜かけて、『20世紀少年 全22巻』(浦沢直樹、小学館、2000~2007)を一気読みした。さすがに、全22巻を一気読みするなどということは滅多にすることではない。

 このマンガは、「本格科学冒険漫画」と銘打たれている。手塚治虫の系列にあるが、すでに大友克洋以降の世界である。

 あらすじについて書くなどという野暮なことはしないが、1970年当時の小学校5年生(・・と思われる)主人公の少年たちの「大阪万博」をめぐる体験と非体験をめぐる、その後45年にわたる物語である。体験というのは「大阪万博」にいって実際に体験できたことについて、「非」体験とは万博には行きたくてしょうがなかったが行けなかったこと。

 当時の少年にとって(・・現在でもそうであると思いたいが)、科学技術というのは、ほんとうにワクワクさせてくれる大きな対象だったのだ。万博はまさにその科学技術の象徴的存在で、○○館に行きたい、△△館に行きたい・・と、それこそ万博関連の読み物を貪るように読んでいたものだ。いまでも万博会場のレイアウトは大まかなところはアタマのなかにある。

 もちろん、万博にはそれほど思い入れのなかった者もいれば、万博に行けなかったことも者もいただろう。幸いなことに私は、関西生まれで両親も関西出身なので、里帰りの機会に万博には行くことができた。太陽の塔や、「月の石」が展示されたアメリカ館だけでなく、がらがらだったソ連館、ベルギー館などにはいった記憶がある。ビルマ館の前で撮影された写真もある。

 万博といえば、私と同じ世代の人間にとっては、あくまでも大阪万博であり、それ以後何度も開催された数々の万博は正直なところあまり眼中にはないのではないか? したがって、以下に万博と記した場合、すべて大阪万博のことをさす。

 連載は2000年から始まったが、このときには週刊マンガ誌の「ビッグコミック スピリッツ」を読む習慣がなくなっていたので、リアルタイムでは読んでいないなかった。

 『20世紀少年』の存在を知ったのは、かつての部下から話を聞いたことによる。
 正確な年齢は忘れたが、私より10数歳若いその彼は、「サトウさんの年代なら絶対にわかるマンガですよ!」といって、強く読むことを薦めた。それからすでに5年以上は立っているはずだ。全巻を「大人買い」してから2年近く。

 今回やっと重い腰を上げて一気読みすることとしたのは、ちょうど先週が、1970年を締めくくる大事件であった三島由紀夫の割腹自決の11月25日から40年にあたるからでもある。

 40回目の「憂国忌」に参加したこともあり、「三島事件」というネガに対して、ポジであった「大阪万博」をめぐる物語である『20世紀少年』を読むにはこの機会しかないと覚悟(!)を決めて読み出した。

 最初はあまり面白くなかったが、3巻あたりから俄然面白くなって、読むのが止められなくなる。
 個人的には 2/3 くらいの分量で終わらせたほうが良かったのではないかと思う。ちょっと二転三転が多すぎるような気がしたのは正直なところだが、雑誌連載であるかぎり作者の都合だけで止められないも、人気マンガの運命ではある。

 読んでみて思ったのは、なるほど 1962年生まれの私には、手に取るようにわかる世界である。

 作者の浦沢直樹は1958年生まれ、このマンガ作品の主人公たちとまったく同じ年齢設定である。
 1970年の大阪万博の年には小学校5年生で11歳から12歳、当時小学校2年生で8歳であった私よりは3学年上にあたる。東京生まれの作者が大阪万博に行ったのかどうかは知らない。
 小学校の年代の3歳差というのは、近いようで意外と遠いものがあるが、基本的に似たような体験をしていることは確かだ。1970年当時の東京郊外の描写は私の記憶そのものであり、ディテールもよく再現されている。

 「人類の進歩と調和」をテーマに掲げた大阪万博、しかしその後の歴史がどうであったかはいわずもがなである。

 私は先にも書いたように、万博にはいっているが、万博にいってない同級生たちのことなどアタマのなかにはまったくなかったようだ、このマンガを読むまでは。その意味では、万博が与えた影響は、必ずしもポジとは言いきれない
 イマジネーションが欠如しているといわれればそのとおりであるが、万博に行きたいのに行けなかった男の子たちのルサンチマンが、このマンガのアンチヒーローである「ともだち」の根底に澱んでいる。

 このマンガも、1960年前後に生まれた人間が、1995年に体験したものを踏まえて描かれていることはいうまでもない。1995年の出来事とは、阪神大震災とオウム事件である。自然災害と人為的な災害の違いはあるが、ハルマゲドン幻想をかき立てるものがあったことは否めない。

 このマンガにでてくる「よげんの書」とは、いうまでもなくノストラダムスの大予言を下敷きにしている。当時、ものすごく流行ったのだが、地球滅亡の年とされていた 1999年が過ぎ去った現在、日本人の多くにとっては、すでに過去の一エピソードに過ぎないだろう。

 このマンガの読者は、おそらく現在の30歳台~40歳台の男性が中心だと思うが、1960年前後以降の人間は、こういったオカルト的世界の雰囲気をたっぷりと吸い込んだ世代であることは知っておいたほうがいい。科学とオカルトが分離しない精神状況、これが「オウム事件」の根底にある。

 これだけ長期間にわたって週刊誌に連載された長大な作品を、それほどの破綻なく最後まで描ききったということはすごいことだ。
 ただし、ちょっと長すぎるし、終わりの 1/3 はなくても良かったのではないかと思う。余韻をもたせて終わらせたほうが、より強烈なインパクトをのこした作品に仕上がったのではないかと思うのである。

 1970年を小学生として過ごした人間にとっては、きわめて面白い「物語世界」であった。





<関連サイト>

『20世紀少年』(ビッグコミックスピリッツ ギャラリー)


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(2014年8月15日 情報追加)


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