「学(まな)ぶとは真似(まね)ぶなり」。
昔からよくいわれてきた格言のような表現だ。
日本語の「まなぶ」とは「まねぶ」と同じこと。つまり、人の真似をすることが学びの出発点にあるということだ。漢字が導入される以前のやまとことばの段階においては、「まなぶ」(manabu)と「まねぶ」(manebu)はコトバとしてはほとんど同じで、概念としても同じだったのだろう。
同じような表現としては、「あまい」(amai:甘い)は「うまい」(umai:旨い)というものもある。
「学ぶとは真似ぶなり」、これをさらに分解すると、「気づき」と「観察」、そしてカラダを使った「再現」ということになる。
お手本(モデル)を真似ることによって、自分の欠けている部分に「気づく」。ここにあるのは、なによりもまず「観察」ということの重要性だ。そして、気づいて観察したことを、自分のカラダで「再現」してみる。これが、「真似ぶ」が「学ぶ」ことになる原点あり、本質であるのだ。
これは、「習うより慣れよ」という格言にも通じるものがある。
このことは、母子ネコを「観察」していると実によく納得されることだ。
よちよち歩きできるようになってくると、子ネコは母ネコの行動を徹底的に「観察」して真似することで、ノラネコとして一匹で生きていくための「生きるチカラ」を身につける。ノラネコにとって「生きるチカラ」とは、端的にいって自分でエサをゲットできる能力のことだ。
ノラネコの猫生は、遺伝子に託された本能だけで生きていけるのではなく、学習(学び)をつうじて脳が発達し、筋肉が発達していく。これは、ネコが「成長」していくプロセスそのものなのだ。
ネコは「勉強」しない。「学習」するのだ。
ネコには「学校」はない。あるのは「家庭教育」だけだ。そして家庭には父ネコは最初から最後まで存在しない。
コトバを使う動物である人間とは違って、ネコはコトバをもたないので、余計なことで悩んだりはしない。妄想はコトバを使う人間にのみ存在する。
ネコにとっては、視覚情報はイメージ情報として、嗅覚と聴覚などの五感をつうじて獲得された情報とともに記憶されているはずだろう。
REM睡眠中に夢でうなされているようにカラダを動かしているネコを見ることがある。潜在意識のなかにさまざまな画像情報が記憶されていて、それが無意識のうちにネコに行動をとらせているのだろう。
母ネコはけっして子ネコに教え込むことはしない。我が振りを見せて、子ネコが真似する機会をつくるのみ。子ネコはただひたすら徹底的に母ネコの行動を「観察」し、「学習」するのだ。
思わず母ネコの行動に同期(シンクロナイズ)してしまう子ネコの行動が面白い。色違いでも母子であることには変わりない。
そうでなくても好奇心にあふれた子ネコに対して、母ネコはときには叩(はた)いたり、チカラを行使することもあるが、基本は放任主義のようだ。目を光らせて、子ネコの行動を見守っているのみ。
子ネコがじゃれついてくるとききは、甘えさせている。授乳中に子ネコをなめてやったりする。
子ネコ時代に十分に甘えさせることもまた、自立のために不可欠になる。子ネコ時代にたっぷりと愛情を注がれていると、ノラネコとして成熟した存在になる。けっして愛情欠乏症になることはない。
「学習」(学び)とは、強いて勉める「勉強」ではない、英語で言えばラーニング(learning)、つまり主体的に学ぶことだ。
主語はあくまでも自分、させられる教育ではなく、自発的に取り組む姿勢、これが現代日本人にとってもっとも求められることである。そのためには、いったん人間世界を離れて、自然界を虚心坦懐に眺めてみることが必要だ。
その目的では、ノラネコがもっともふさわしい。都市部でも、都市近郊でも、簡単に観察できるのがノラネコの生態。
人間にとって必要なのはただ、過剰な思い入れを廃して虚心坦懐にして「観察」するマインドセットをもつこと。ノラネコがかわいそうだとかは思わないこと。けっしてネコを擬人化せず、ネコをネコとして見ること。
ノラネコがノラネコとして生きていくための知恵を、子ネコは母ネコから「学ん」でいるのであるから。
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書評 『「気づきの瞑想」を生きる-タイで出家した日本人僧の物語-』(プラ・ユキ・ナラテボー、佼成出版社、2009)
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