■「世界4位の海洋大国」日本。無尽蔵の富が埋蔵されている日本近海は国民の財産だ!■
日本は、国土面積が世界61位であるにかかわらず、領海・排他的経済水域(EEZ)の面積は世界第6位、そして海岸線の長さも世界第6位である。
だが、海を「二次元の面積」ではなく、「三次元の体積」でみると、日本の海はなんと世界4位である! 体積でみたら 1,580立法キロメートル、中国のなんと5倍。日本がまぎれもなく「海洋国家」であり、しかも「海洋大国」であることは明らかなのだ(*左に掲載の表紙を参照)。
しかもその「世界4位の海」には無尽蔵の富が埋蔵されているのだ。国内消費量94年分のメタンハイドレードが海底や砂層の孔隙に存在するのをはじめ、黒潮は一年間に原発500年分の海中ウランを運んでくる。そしてまた海底熱水鉱床にはレアメタルが確実に存在する。あとはこれらをどう捕集し、採掘し、利用するかにかかっているのだ。
また、世界三大漁場である日本の沿岸漁業は、栽培漁業である養殖とあわせると、日本人の食生活を今後も支えていくことができるのである。
人口減少による衰退が懸念されている日本であるが、視点を海に向ければ、かなり明るいことがわかってくる。
これらの無尽蔵の富は、われわれ日本国民に天から与えられた大きな財産である。であるがゆえに、この財産を虎視眈々と狙う不法者が近隣諸国に存在するのは不思議でもなんでもない。
紛争となっている尖閣諸島だけでなく、竹島、沖ノ鳥島、肥前鳥島、北方領土も含めた離島の存在の理解を深めることが必要だ。離島こそ日本の生命線と捉え、離島を死守することこそ、近隣諸国におかしな考えをもたせないようしなくてはならない。著者はそのための方法論を提案している。
海洋政策、海洋安全保障、現代海賊問題、国境問題および離島問題の研究を専門とする著者は、「海に守られた日本から、海を守る日本へ」の意識転換を日本国民呼びかけている。
どうしても「島国」意識が抜けず、関係者以外は「海洋国家」意識をもちにくい日本であるが、日本の海を政治経済の観点から知るための入門書として一読することを奨めたい。
<初出情報>
■bk1書評「「世界4位の海洋大国」日本。無尽蔵の富が埋蔵されている日本近海は国民の財産だ」投稿掲載(2010年12月25日)
■amazon書評「「世界4位の海洋大国」日本。無尽蔵の富が埋蔵されている日本近海は国民の財産だ」投稿掲載(2010年12月25日)
目 次
はじめに-日本がもつ世界四位の海水量
第1章 偉大な力をもつ「日本の海」
第2章 「日本の海」に眠るエネルギーと鉱物資源
第3章 水産資源と先進技術が生む高度成長
第4章 「日本の海」の大チャンス
あとがき-海を守り続ければ未来は必ず明るい
著者プロフィール
山田吉彦(やまだ・よしひこ)
1962年、千葉県に生まれる。東海大学海洋学部教授。経済学博士。海洋政策研究財団客員研究員。学習院大学経済学部を卒業したあと、多摩大学大学院修士課程を経て、埼玉大学大学院経済科学研究科博士課程修了。東洋信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)勤務を経て、1991年から日本財団(日本船舶振興会)に勤務。海洋船舶部長、海洋グループ長などを歴任。2008年東海大学准教授に就任、2009年教授となる。海洋政策、海洋安全保障、現代海賊問題、国境問題および離島問題の研究を行う(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものを wikipedia によって増補)。
<書評への付記>
現在の日本人の快適な生活が大きく海に依存していることに、多くの日本人は日頃意識することなく、しかも無関心のようだ。どうしても「島国」意識が抜けず、関係者以外は「海洋国家」意識をもちにくいためだろう。
何といっても「食糧とエネルギー」のほとんどを大きく海外からの輸入に依存しているが、金額ベースでみて約7割が「海上輸送」に依存している。海上運賃は航空運賃よりはるかに安いので数量ベースでみたら、比率はもっと高くなることはいうまでもない。
同じ講談社現代新書からでた 『日本は世界5位の農業大国-大噓だらけの食料自給率-』(浅川芳裕、講談社+α新書、2010)とあわせて読むべきであろう。この本については、このブログですでに紹介している。書評 『日本は世界5位の農業大国-大噓だらけの食料自給率-』(浅川芳裕、講談社+α新書、2010) を参照。
しかし、島国の陸地で営まれる農業と、この島国を囲む海での営みは似て非なるものといってよいだろう。
海は、第一次産業である漁業と養殖業、そして食品加工業だけの存在ではない。海には、無尽蔵の資源が埋蔵されているのだ。これは陸地の比ではないのだ。
<ブログ内関連記事>
書評 『海洋国家日本の構想』(高坂正堯、中公クラシックス、2008)
・・海は日本の生命線!
書評 『平成海防論-国難は海からやってくる-』(富坂 聰、新潮社、2009) ・・海上保安庁巡視艇と北朝鮮不審船との激しい銃撃戦についても言及。海上保安官は命を張って国を守っている!
『何かのために-sengoku38 の告白-』(一色正春、朝日新聞出版、2011) を読む-「尖閣事件」を風化させないために!
「かくすれば かくなるものと知りながら やむにやまれぬ 大和魂」(吉田松陰)・・sengoku38 による「尖閣ビデオ」投稿の件について、2010年11月11日時点の情報で書いたもの。その後、増補。
海上自衛隊・下総航空基地開設51周年記念行事にいってきた(2010年10月3日)・・航空母艦なき現在、陸上にある海軍航空基地は最前線である!
書評 『日本は世界5位の農業大国-大噓だらけの食料自給率-』(浅川芳裕、講談社+α新書、2010)・・本書の姉妹編(と、すくなくとも出版社はそう思わせたい?)
(2020年5月28日発売の拙著です)
(2019年4月27日発売の拙著です)
(2017年5月18日発売の拙著です)
(2012年7月3日発売の拙著です)
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