2011年11月16日水曜日

今年2011年の世相をあらわす漢字は 「水」 に決まり-わたしが勝手に決めました(笑)


(カンボジアの高床式民家は洪水対策用)

 まだ11月半ばですから時期的にはまだちょっと早いのですが、年末の話題を一ヶ月以上前に先取りしておきましょう、来年の話ではありませんから、鬼が笑うこともありますまい。

 毎年恒例の「世相をあらわす漢字」というイベントがありますね。

 「漢検」という漢字検定試験の実施主体である、財団法人日本漢字能力検定協会が主催しているイベントですが、12月12日の「漢字の日」(・・なぜこの日んなの?)にちなんで京都の清水寺(きよみずでら)の貫主が大きな筆で揮毫(きごう)するので有名なイベントです。

 ま現在、漢字検定協会のウェブサイトで募集していますが、今年2011年の漢字をひとつ選べといわれたら、わたしならためらうことなく「水」と答えたいと思います。きょうが水曜日だからではありません。

 今年は、日本では「3-11」の千年ぶりの大津波に、集中豪雨被害が西日本だけでなく、東北(新潟と福島)の河川氾濫、紀州山地の大洪水など立て続けに続いています。

 それだけでなく、日本にも縁の深いタイ王国では 50年ぶりの大洪水で工業団地の集中している古都アユタヤと、その下流域の首都バンコクも混乱しています。

 まさに、「水」に翻弄された一年となっています。だから、今年の漢字は「水」だと言いたいわけです。お亡くなりになった方も多いので、あまりうれしい話ではありませんせんが、記憶にとどめるためにも必要だと考えます。


「治水」は「治国」のかなめ

 今年は日本各地で大洪水が発生していますが、それでもむかしに比べたらだいぶ減ったようですね。

 日本でも戦後のある時期までは各地で洪水があいついでましたが、治水技術の向上で大規模な洪水を防げるようになったからなのです。

 安全と引き替えに、日本の河川はコンクリートで護岸工事が行われて景観が失われてしまいましたが、それはそれで仕方がないでしょう。また暗渠(あんきょ)という形で、地上に水があふれでない工事も都市部では行われてきました。

 タイの大洪水の話をしましたが、平野がひろがるインドシナ半島でも、洪水はけっしてまれな話ではありません

 日本のように急流がないので突然洪水になるということがないかわりに、じわじわと浸水する面積が拡がっていくのが特徴です。

 写真はカンボジアの民家です。ベトナムのホーチミン(=旧サイゴン)から陸路でカンボジア王国の首都プノンペンにいく途上で撮影したものです。

 この地域は、雨期の洪水によって水没することを前提に民家がつくられているのです。アンコールワット周辺にあるトンレサップ湖は雨期には約3倍にも面積が拡大するのです。つまり、乾期の陸地が水没するというわけなので、雨期には民家は水中に浮かぶ小島のようになるわけです。

 日本でいえば弥生時代の高床式住居ですね。穀物を貯蔵するのが目的であった高床式住居はネズミ対策が主目的でしたが、東南アジアは洪水対策が主目的なのですね。 

 建築用語でいえばピロティです。「3-11」の際も、ピロティ建築は津波の被害が軽微だったと聞いています。阪神大震災のさいのに、耐震性について疑問がでたことが記憶のなかにありますが、東北の太平洋沿岸では大丈夫だったようですね。

(ミャンマーのインレー湖)

これはミャンマーのインレー湖の風景です。湖のなかにピロティによる高床式の住居をつくって居住しています。あたかも運河をはりめぐらしたかのような風景ですが、じつはそうではありません。とはいっても、かつて「東洋のベニス」といわれちたタイのバンコクもまた、こんな感じだったのではないだろかと考える材料にはなるでしょう。


洪水が毎年発生するインドシナ半島ではピロティは生きるための知恵

 ピロティ(Pilotis)といえば、世界遺産登録が試みられている建築家ル・コルビュジエで有名ですが、ベトナムやカンボジア、タイでは民家ではよく見られます。伝承されてきた知恵というわけですね。

(東京・上野にあるピロティ構造の建築物)

 写真はコルビュジエ設計の国立西洋美術館(東京・上野)。コンクリート打ちっ放しのピロティ構造の建築物です。

 フランス語系スイス人であったコルビュジエの発想の源泉はどこにあったのでしょうか? もしかして、植民地であったインドシナ三国(=ベトナム・ラオス・カンボジア)の建築物だったのかな、と考えてみるのも面白いものです。

 広い意味では日本の伝統的な家屋もピロティ様式ですが、東南アジアのものと比べると、地面からの高さが 1m程度と非常に低く、洪水対策というよりも湿気対策であると考えられます。日本の家屋があっという間に、床下浸水、床上浸水してしまうことも、洪水対策ではない証拠でしょう。吉田兼好が「家の作りやうは、夏をむねとすべし」(徒然草)と言っているとおりですね。

 その土地、その土地にもっともあった家のつくりがされることによって、自然災害や自然の猛威を防ぐのは、人類の知恵というべきでしょう。

 それにしても、「水の惑星」といわれるこの地球。水は人間が生きるために不可欠でありながら、また人間の命をあっという間にいとも簡単に奪ってしまうもの。自然というのは人間にとってはまさに両義的な存在です。

 2011年は「水」の年として記憶しておきたいものですね。



P.S. 案の定、「2011年 今年の漢字」は「絆」でした。「水」は10位にも入ってないのは残念(笑)(2011年12月12日 追記)



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・・かつてのバンコクも「東洋のベニス」と呼ばれていたが、それをほうふつとさせるがミャンマーのインレー湖

かつてバンコクは「東洋のベニス」と呼ばれていた・・

『龍と蛇<ナーガ>-権威の象徴と豊かな水の神-』(那谷敏郎、大村次郷=写真、集英社、2000)-龍も蛇もじつは同じナーガである

書評 『三陸海岸大津波』 (吉村 昭、文春文庫、2004、 単行本初版 1970年)

書評 『津波てんでんこ-近代日本の津波史-』(山下文男、新日本出版社、2008)

『緊急出版 特別報道写真集 3・11大震災 国内最大 M9.0 巨大津波が襲った発生から10日間 東北の記録』 (河北新報社、2011) に収録された写真を読む
 
(2014年10月8日 情報追加)


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