2019年1月26日土曜日

「新・北斎展」(六本木ヒルズ・森アーツギャラリー)に行ってきた(2019年1月26日)ー「画狂老人卍」を名乗っていた最晩年88歳の肉筆浮世絵が必見!


「新・北斎展」(六本木 森アーツギャラリー)に行ってきた(2019年1月26日)。世界的に著名な日本人アーチストの筆頭にくるのが北斎(Hokusai 1760~1749)であろう。新たな北斎像を展開してくれるというウリなので行ってみることにした。

北斎といえば「富嶽三十六景」(上掲の右)。大胆な構図がインパクトのあるこの浮世絵版画は、日本人のみなず世界中で共有されているといっても過言ではないだろう。実際、フランス印象派に与えた影響は計り知れないものがある。2017年に国立西洋美術館で開催された「北斎とジャポニスム」で具体的な作品について検証が行われている。



今回の展示会でいちばん興味深かったのは、浮世絵版画の制作工程における絵師の位置づけを明確にしていることだろう。絵師(えし)と彫師(ほりし)、そして摺師(すりし)という分業が行われていた浮世絵版画は、いわゆる「複製芸術」であり、多色刷りの浮世絵の制作は、それぞれの職人のもつ専門における熟練がものを言う。

葛飾北斎は、いうまでもなく絵師であり「原画制作者」であったが、完成作品としての浮世絵版画は、多色刷りのために複数の版木を彫る彫師と的確に着色する摺師の熟練がなければ生まれてこないものだ。だから、北斎の浮世絵は北斎ひとりの力でできあがったものでさはない。完成後をイメージして原画を作成する能力を評価すべきなのであろう。


「画狂老人卍」を名乗っていた最晩年88歳の肉筆浮世絵が必見!

ポスターの左半分(上掲)に登場する赤鬼は、肉筆浮世絵の「弘法大師修法図」に登場するもので、疫病を調伏する弘法大師空海と対に描かれている。最晩年に「画狂老人卍(まんじ)」を名乗っていた88歳(!)当時の作品だ。




東京の西新井大師總持寺が所蔵する作品である。この肉筆浮世絵は大型で迫力がある。毎年10月第1土曜日の「北斎会」(ほくさいえ)で、總持寺の本堂で展示されるそうだが、なかなか見に行く機会もないだろう。この作品は今回の展示会の必見作品といえよう。


展示の最後に登場するこの作品は、この段階において、北斎の意識は絵師からアーチストに変貌したといえるのではないだろうか。複製品としての浮世絵版画ではなく、一品限りのアートとしての肉筆浮世絵の絵師として。


■浮世絵展示方法のイノベーションが必要だ

浮世絵版画というものは、直接手にとって眺めるのが本来の鑑賞法であるが、自分で所有しない限り、それは実現できないものである。

そのために美術展での展示があるわけだが、いかんせん、たいていの浮世絵版画はサイズが小さいので美術館での鑑賞には適しておらず、しかも色あせ問題があるので、長期間展示することもできない。正直なところ、アート本で眺めているほうがじっくり鑑賞できるのは否定できない事実だ。

今回の「新・北斎展」の展示作品も、出品作品の大半が小サイズのものばかりなのは仕方がないことだとはいえ、あっという間に見終わってしまう。というのは、専門家ではないので、細部まで細かく見る必要がないからだ。

小サイズという点ではフェルメールも似たようなものであり、ややがっかりしてしまうことがわかっていながらも、見に行ってしまうのは、今回もまたおなじであった。もちろん、世界的に有名な「北斎漫画」の実物も展示されているので、これは大いに楽しませてくれる。

むしろ、完全に近い複製を制作して、直接手にとって眺めることのできるような展示が考えられないものか、などと考えてしまうのである。

2月9日から始まる「奇想の系譜展-江戸絵画ミラクルワールド」(東京都美術館)とのセット券(2,800円)を購入すると「新・北斎展」の入場料は1400円と200円の割引になる。正直なところ、私としては「奇想の系譜展」には大いに期待をしている。






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(2019年3月28日 情報追加)


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