「没後150年 歌川国芳展」にいってきた。東京の六本木ヒルズにある森アーツセンターギャラリーが会場。
固有名詞だから、ほんとうは國芳と表記したほうがいいのだろうが、ここでは国芳と書いておく。いや、KUNIYOSHI とローマ字のほうがいいのかもしれない。
国芳は劇画であり、マンガやアニメの源流といってもいい。だから現代人にはアピールするチカラが強いのだ。実際に、観客は若い層が多いように思われた。
それも日本人だけじゃない、外国人にも大いにうけているようだ。
すでにロンドンとニューヨークと開催された展覧会でも KUNIYOSHI は大好評を博したという。
今回の展覧会は没後150年の大回顧展。生誕150年ではなくて没後150年。幕末の 1861年に 65歳で没した、そんな昔の人の作品なのに、古さをまったく感じさせない。不思議なのだ。
もちろん風俗習慣もまったく異なるものになってしまった現代日本と江戸末期では描かれる題材そのものが違うのは当たり前。だが、着想の斬新さ、自由さ、奇妙さは、時代をはるかに超えている。
まさに奇才。イマジネーションあふれる浮世絵の数々。
面白ければそれでいい。国芳については、あれこれくだくだ述べるよりも、実際に絵そのものを見るに限る。
マンガなんだから。マンガは批評するものよりも、そのまま読むべきものだ。せめてポスターだけでも、あるいは画集で、できれば本物を美術館で。
いちばん有名なのは、冒頭に掲載したポスターにも採用されている 「みかけハこハゐがとんだいゝ人だ」だろう。マニエリスムの画家アンチンボルドにも、野菜で構成した図書館司書という有名な絵があるが、国芳のほうがはるかに面白い。
とにかく動物戯画は圧巻だ。ネコや金魚が擬人化された戯画は、あまりにも奇妙に面白いので、ほんとうはうれしくて会場で大笑いしたくなる 。
ネコ尽くしも面白い。ネコ文字(ネコの当て字)。下に掲載したのは、かつをの当て字。このほか、ふぐ、た古(たこ)などもある。国芳自身が、ものすごくネコ好きだったようだ。
いま同時期に『ゴヤ展』もやっているが、どちらか一方だけ選べといわたら、正直なところ『国芳展』のほうを選ぶ。ゴヤはすでにマドリードのプラド美術館でじっくり見ているので、今回は見なくてもいいかという気持ちがあるだけでなく、面白いほうがいいという選択がはたらくからでもある。
日本人というのはほんとにすごいなあ、とあらためて思う。
こういう絵を描き続けた国芳という画家だけでなく、それを受け入れて、喜んでお金を払って浮世絵版画を買っていたのが、また当時の日本人だ。
遊び心。これがキーワードなのかな。落書きを写したという設定にしているヘタウマ風の役者絵は、マンガそのもの。『ガリバー旅行記』のガリバーのような巨人とこびとたちの浮世絵も笑える。
浮世絵は基本的に版画なので、サイズが小さいのは美術展としては残念。
だから、会場ではざっと見て、図録を買って帰宅してからじっくり見ながらまた笑うのもよい。図録は大部なもので 2,500円もするが、買うだけの価値は十分にある。図録を開いて見ていると、あまりにも面白いで、きりがないのだが。
江戸時代の人たちも、浮世絵版画を買ってきては、ニヤニヤしながら見て笑っていたのではないかな? ほんとうはそういう楽しみ方がただしいのだろう。
今回の大回顧展は巡回展で、すでに大阪と静岡での展示は終了している。見逃したひとはこの機会にぜひ!
「没後150年 歌川国芳展」
会場: 森アーツセンターギャラリー 六本木ヒルズ森タワー52F
会期: 2011年12月17日(土)~2012年2月12日(日) 計57日間
後期:2012年1月19日(木)~2月12日(日)
開館時間: 月・水~日曜日 午前10時~午後8時
火曜日 午前10時~午後5時(最終入館時間は閉館30分前まで)
休館日: 2012年1月18日(水)-作品展示替え
-会期中に展示替えあり。前期:2011年12月17日(土)~2012年1月17日(火)
<関連サイト>
没後150年 歌川国芳展(1/17~2/12) 森アーツセンター(六本木ヒルズ)
150年の時を経ても楽しい歌川国芳 その1「なぜ今、国芳か?」(岩切 友里子、日経ビジネスオンライン 2011年12月16日)
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