2022年8月5日金曜日

書評『疑惑の作家「門田隆将」と門脇護』(柳原滋雄、論創社、2021) ー ファクトベースで行われた実力派ノンフィクション作家の検証

 
『疑惑の作家「門田隆将」と門脇護』(柳原滋雄、論創社、2021)という本を読んだ。  ジャーナリストによる実力派ノンフィクション作家の検証本である。その執拗なまでの「ファクト」への迫り方に、執念に似たものを感じた。 

門田隆将(かどた・りゅうしょう)氏は、実力派のノンフィクション作家である。だが、現在ではすっかり右派の論客(?)となってしまった。 著者にいわせれば、さらにフェイクニュース垂れ流しの「デマ屋」に堕してしまったことになる。

たしかに、門田氏のツイッター内容は「新型コロナ感染症」が蔓延し始めた2020年最初まではわたしも見ていたが、その後はまったく見なくなって久しい。 トランプ元大統領の「不正選挙」主張の垂れ流しなど、読むに堪えない内容になっていたからだ。

そんな門田隆将は、もともと「週刊新潮」の記者だったらしい。それがタイトルに登場する門脇護(かどわき・まもる)である。本名である。

この門脇氏が、殺人事件犯人にかんする誤報と名誉毀損の数々を起こしていたことが、著者によって掘り起こされている。 

「週刊新潮」に25年在籍したが最終的に編集長になれなかったのは、そのためであるらしい。そして、50代以降は門田隆将のペンネームでノンフィクション作家となって成功したことで、門脇護の封印に成功していたわけだ。この著者がほじくりだすまでは。 


■実力派ノンフィクション作家としての作品

わたしが読んだ門田隆将氏の作品は下記の3冊である。 山口県光市で起きた一家惨殺事件で一人生き残った若い男性を主人公にした『なぜ君は絶望と闘えたのか 木村洋の3300日』(新潮社、2008)を読んで、この作家のことを知った。これは素晴らしい作品だった。 

その後、「3・11」の福島第一原発の事故を最前線で対応した東京電力のエンジニアを主人公にした『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の500日』(PHP研究所、2012)を読んだのは、前著の記憶があったからだ。この本もすばらしい作品だった。これはその後、映画『Fukushima50』の原作となった。  

そして、新型コロナ感染症のパンデミックが始まった年に出版された『疫病 2020』(産経新聞出版、2020)を読んだ。かなり早い段階にでたノンフィクションとして、この作品も読んだ。もちろん、医学の専門家によるものではないが、2020年時点で状況を俯瞰するには好著であった。  


「盗用疑惑」は、最高裁でクロ判定がでた作品もある

ところが、わたしが読んだことのない作品で、かなりやらかしているらしいことがわかった。 日航機墜落事故(1986年)を描いた『風にそよぐ墓標 父と息子の日航機墜落事故』(集英社、2010)での「盗用疑惑」は、最高裁でクロ判定が出ている。

つまり、門田隆将氏は遺族が書いた著書からリライトして無断借用していたのである。 この件では、最高裁まで争って門田隆将氏の敗訴となっている。そうだったのか、と。 それは知らなかった。

このほか、山本七平賞受賞の『この命、義に捧ぐー台湾を救った陸軍中将根本博の奇跡』(集英社、2010)でも、参考文献からのリライトしたうえでの無断借用が多数にのぼることが徹底検証されている。

これは巻末の「パクリ疑惑対照表」にまとめられている。この対照表をみたら一目瞭然だ。 最高裁でクロ判決がでた2015年以降、集英社からは1冊も出せていないのは、ある意味では当然だろう。 


■学生時代はリベラル派だった

精力的な執筆によって、実力派ノンフィクション作家としてのブランド確立に成功した門田隆将氏だが、現在の姿は冒頭に記したとおりである。

朝日新聞を執拗に攻撃する門田氏は、もともと学生時代はリベラル派であったらしい(笑)本多勝一を尊敬して中国に行っている。 

作家と作品はイコールではないし、一をもって十を判断するのは公平ではないが、ノンフィクション作家の門田隆将氏の作品にかんしては、是々非々で臨むべきであろう。すばらしい作品もある一方、盗用疑惑に充ち満ちた作品もある、ということを。 

基本的に著者は「門田隆将」こと門脇護氏に対しては厳しい姿勢で臨んでいるが、比較的公平な態度は貫いているといえよう。もちろん、この本じたいも批判的に読むことが必要だ。






目 次
"デマ屋" としての同一人格 ー 「門田隆将」と門脇護 
第1章 最高裁から「盗用作家」の烙印押された前歴
第2章 門田隆将の来歴「週刊新潮」時代の門脇護
第3章 「右派論壇のヒーロー」から「ネトウヨ」への凋落
第4章 「デマ屋」が放ったアメリカ大統領選挙の無数のデマ
第5章 門田隆将ノンフィクションの虚構
第6章 馬に喰わすほどある “言行不一致” 語録集
第7章 山本七平賞受賞作の「大量パクリ疑惑」対照表(角川文庫・37カ所) 
あとがき
主要参考文献

著者プロフィール
柳原滋雄(やなぎはら・しげお)
1965年、福岡県生まれ、佐賀県育ち。早稲田大学卒業、編集プロダクション勤務、『社会新報』をへてフリーのジャーナリスト。政治・社会分野を主な取材対象とする。著書に『カンボジアPKO体験記』『ガラパゴス政党 日本共産党の100年』『沖縄空手への旅』など。(本書奥付より)


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