「特別展 本阿弥光悦の大宇宙」(東京国立博物館平成館)に行ってきた(2024年1月26日)。
本阿弥光悦(ほんあみ・こうえつ 1558~1637)は、戦国時代末期から江戸時代初期の京都に生きた美の巨匠である。本人が美術家であるだけでなく、目利きでもあり、美術プロデューサーの元祖的存在でもある。
(本阿弥光悦 Wikipediaより)
刀剣の鑑定を行う家に生まれ、みずからもその家業を行っただけでなく、豪華絢爛な漆器(上掲のポスターの「舟橋蒔絵硯箱」)や、茶人として味のある陶器を残しており、なによりも書家として名を残した人物だ。 「寛永三筆」の一人とされている。
今回の展示は、そんな本阿弥光悦の全体像がわかる企画であった。
展示の重点が置かれているのは、本阿弥光悦と日蓮宗との関係だ。本阿弥と「阿弥」が含まれているので、「阿弥号」の連想から念仏系だと思い込んでいたが、それはまったくの間違いであったわけだ。
(『蓮下絵和歌巻』(部分)本阿弥光悦書、俵屋宗達画 Wikipediaより)
光悦は熱心な法華衆であったらしい。日蓮の著作や法華経も書写しており、これらの展示品も興味深い。たしかに「蓮」をモチーフにした作品は、日蓮宗信仰の反映と考えるべきかもしれない。
光悦は中山法華経寺(千葉県市川市)とも深い関係をもっていたわけか。 光悦は「正中山」という山号を揮毫している。その揮毫をもとに木彫りした扁額の実物が展示されていた。
(市川市指定文化財の「光悦筆扁額」)
ところで、おなじ上野公園で開催されている「モネ展」は入場に列ができていたが、「本阿弥光悦展」のほうはそうでもなかった。
まあ、現代日本の一般ピープルには、モネのほうがポピュラーなのかもしれない。モネは浮世絵の影響を受けていることは別にしても、モネのほうがいかにも現代人好みであるのは当然といえば当然かかももしれないが・・・
とはいえ、「特別展 本阿弥光悦の大宇宙」がれほど混雑していないのは、ありがたいことではあった。
本阿弥光悦がいかなる存在であり、近世の日本美術にあたえた多大な影響を知り、しかも日蓮宗と法華経の大きな影響下にあったことを知るうえで、ぜひ足を運んでみるべき美術展である。
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